今年買った署名本・稀覯本

 

鷲巣繁男『石胎 鷲巣繁男句帖』署名本

元々図書館で借りて読んだ一冊だったのだが、どうしても手元に欲しくなって、献呈署名本を購入するに至った。

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振り返って見れば私の詩歌の旅はここからはじまったと云っていい。

一年の歳月をかけた、長く孤独な旅だった。その灯火となってくれたのが、この本だった。

著者の療養生活の中で生まれたというこの句集に出会わなければ、私が療養詩歌を作ることもなかったのだろう。

そういう点では、まさにこの一年の初めに出会い、その後も私を導きつづけたという点で、宿命的な一冊となった。

 

石田波郷『惜命』

療養俳句の金字塔と謳われるこの本との出会いもまた、図書館が作ってくれた。

f:id:evie-11:20211221112540j:plain元々図書館でたまたま見かけた『江東歳時記・清瀬村(抄)』と出会ったのが縁で、それからどうしてもこの『惜命』を読みたかったのだった。

今年この本と出会えなければ、私は療養詩歌を作ろうと意を決することができなかっただろうと思わせられる一冊で、間違いなく今年のベスト本だ。

病に冒された人の切実さと哀切が極まりながらも、俳句として完成された姿は、なかなか他の句集では目にすることができないのではないかと思う。

 

赤尾兜子『虚像』献呈署名本

藤原龍一郎赤尾兜子の百句』を読み、図書館で『赤尾兜子全句集』を借りて読んで、その中でも『蛇』と『虚像』が気に入り、比較的手に取りやすい『虚像』を買った。

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f:id:evie-11:20210620194232j:plain赤尾兜子うつ病に苛まれながら句作をつづけた俳人なのだそうで、その句風は前衛的で難解なのだが、切実さを持って死を描いた俳句の数々には、意味を超えながらも真に迫って私の胸に突き刺さる。

退廃と一言で称するには余りある俳人の内面性を、逆説的に証明する一冊だと感じた。

 

三一書房版『葛原妙子歌集』須永朝彦宛署名本

某サイトを見ていて、たまたま探していた三一書房版『葛原妙子歌集』が署名本だというので、浮き足立って買ってみたら、なんと須永朝彦宛の署名だったことがわかり、おいそれとさわれない一冊になってしまった。

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状態も美本で、触れた形跡はほとんどない。

私などがこの本を持っていて良いものかと思ってしまうのだが、そうは云っても偶然出会ってしまったのだからしょうがない。

元々図書館でこの版元の『葛原妙子歌集』を借りて、その立派な装丁に圧倒されてしまい、これは手元に置いてじっくり読もうと思ったのだが、またしても触るには忍びないという状況に陥ってしまった。

そのため先日出たばかりの『葛原妙子歌集』を閲覧用にと購入した。

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葛原妙子歌集

葛原妙子歌集

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私は古書マニアというわけではないし、愛書家というにはほど遠いので、こうした本との出会いは緊張してしまうのだけれども、今も大事に架蔵している。

 

大手拓次『詩日記』初版本

近代文学の初版本を架蔵するのはこれで二冊目となるけれど、それが大手拓次の『詩日記』なのが喜ばしい。

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この本に関しては、図書館で借りて読んだ現代詩文庫版『大手拓次詩集』に次のような引用があった。

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“積極的の談話はつとめて止むべし。孤独はぼくの生命である。
考へよ、空想せよ、
それはぼくの生命である。寂しき時は慰案(ママ)を内省に求めよ、”

この一節にいたくシンパシーを感じ、ぜひ『詩日記』を読まねばなるまいと買ったのだけれど、初版本ということで、こちらもおいそれと触れるものではなく、少々困ったことになった。

そんなことを気にせずに読むべきなのはわかっているのだけれど、私も一応本を愛する人間として、触れる本と触れない本とがあることはわかっている。

ここはやはり閲覧用にもう一冊買うべきか、少し迷いどころである。

 

おわりに

それにしても図書館の本との出会いから古書沼にハマってしまった感はある。

史学徒の成れの果てなので、やはり原典に触れねばならないという思いは一際強いのだろう。

今年は図書館エッセイ集を上梓した年でもあったけれど、まだまだこうして書き足りないこと、さらに話が広がりそうなことはたくさんある。

ブログ「広寒宮」で綴ってきた図書館にまつわるエッセイに書き下ろしを加えた、図書館エッセイ集です。

「もうひとつの家」としての図書館との付き合い方や、蔵書にまつわること、一利用者から見たコロナ禍の図書館の記録、幼少期に通った図書館との思い出など、今だから読みたい内容をぎゅっとまとめました。

本書が図書館を愛するすべての人の友となりうることを心から願っています。

 

-収録作品-

図書館という希望

ふたつの棚

図書館という友人

ふたたび図書館へ一

図書館の使い方を模索する

コロナ禍の図書館について

蔵書の整理

ふたたび図書館へ二

先達の目とBANANA FISHにみる図書館の精神

図書館という知の海に漕ぎ出す

図書館で知を拓く

学校の図書室の思い出

非常事態宣言下の図書館

本書に登場した書物

またいずれ図書館通を再開させて、その日々をこちらにも綴っていきたい。