「弱い私」を「歌う」こと&うたの日初出詠
短歌の再開
いろいろと思うところがあって、なかなか短歌を詠めずにいたのだけれど、いざ詠んでみるとするすると言葉が出てきて、ああ私は歌っていたかったのだなと気づいた。
私が詩を書く原動力はこの「歌うこと」にあって、思えば幼少期から歌うことが好きで、大きな舞台には二度しか立ったことがなかったけれど、それでも「歌うこと」は私とともにあった。
持病もあって、歌うことを職業にすることはできないけれど、それでも「歌うこと」を意識して詩を書くのと同様に、短歌を詠めばいいのだと気づいて、これまでの葛藤がようやく晴れた気がした。
ここのところ療養短歌という大きな柱から少し離れた恋歌を詠むことが増えた。
それはタブッキの云うところのサウダージに近くて、終わってしまった恋を未練がましく短歌に詠んでいる。
結婚をして、その生活も落ち着いてきて、恋というものから少し遠ざかったところにいるのが少し寂しい気持ちもあって、商業BLを読んだり、少女漫画に触れたりしているけれど、やはり創作の原動力として恋へのあこがれは強い力の源になるなと感じている。
もう30代だからとか、結婚して落ち着くべきだからとか、そういう先入観には囚われたくなくて、だからといって不倫をするというのでもなく、創作を通じて恋をしていたいのかもしれない。
それが新たな私のテーマとなっていくことも十分考えるうるけれど、やはり根本的には「弱い自分」を通じて他者とつながりたい、「弱い自分」を歌っていたいという気持ちが強い。
これは数々の療養詩歌に触れてきた経験もあるし、歌集『滑走路』に並々ならぬ影響を受けたということもある。
ただ病とともに生きる人間として作品を提示することが、ともすれば健康な人間ばかりが描かれる文芸作品一般の中で、誰かの共感を得ることにつながればと思っている。
またゆくゆくは30首を選んで折本に仕上げたいと思っている。
まだまだ歌集にするには数が少ないので、引き続き励んでいきたい。
療養短歌をテーマに詠んだ、短歌30首を収めた折本歌集のPDFです。
失われた恋への挽歌、過ぎ去った夏へのノスタルジーをサブテーマとし、ダークでゴシック、耽美な作風を志向しています。
世の終わり詩神は死せず海の果てきみとふたたび巡り逢うまで
AnthemはCoccoだったね沈黙を守ってふたり白百合の園
ゴシックな雰囲気が香る療養短歌30首を収めています。
青薔薇の冠授けよとこしえに無数の棘は言葉となれり
うたの日初出詠
また参加しようかどうかずっと迷っていた、うたの日に初めて出詠した。
迷うぐらいならやはりどこかで足を踏み出したいという思いもあり、また作歌のモチベーションにもつながるのではないかと考えて参加させていただいた。
これを書いている時点ではまだ結果は出ていないのだが、少しでも多くの方に目に留めていただけるとうれしい。
しばらくつづけてみて、やはり自分ひとりで詠む方が良いなと思えば、これまでのスタイルに戻すかもしれないし、逆に人とシェアすることが楽しいなと思えば今後ともつづけていこうと考えている。
ただ私の基本的なスタイルは、やはりひとりで量をこなして詠んで、その中からいくらか優れたものをおりひめ歌会に出したり、投稿したり、折本を作ったりというスタイルなのかなと思っている。
50首100首と量をこなした上で、選歌を通じてふるいにかけないとなかなかまだ自分の作品に納得できない節があるので、もう少しつづけてみて、うたの日への出詠をつづけるかどうか考えたい。