散文詩を更新しました

夏の亡霊

果てしない徒労の果てに梅雨が来る。眠りつづける人形とともにすべてを放擲して夢をむさぼりたいのに、ひとたび横になれば死に近しいやすらぎが私を包むとわかっていてもなお眠りたくない。湿度と孤独に打ち負けた心はさだまらず、思い乱れてめまいをもよおし、すべてがもやがかって見える中、失ったものばかりがやさしい桃色に輝いて、その乱反射する光があまりにまぶしい。肉体の奥からとめどなく血は流れ、涙を流すことを忘れた両目は充血して、血気水と云うところのおおよそすべてが不調をきたしたまま、偶像に埋もれてゆく部屋に閉ざされている。閉ざすことと閉ざされることの相関関係について想いを馳せてもなお虚しく、見えない誰かの手によって、あるいは病の魔手によって、私はこの部屋にとどめ置かれ、かつて路傍で観た紫陽花の色が死者の纏う白であったこと、その白が暗夜にぼうっと浮かび上がって魂のようだったことを思い出す。梅雨の来ない夏、永すぎる梅雨の夏、幾夏もの記憶を生き延びてきた私は、疲れきった身体に灰色の魂をやどして、人形に届かぬ手をのばす。

 

kakuyomu.jp

 

Acoustic Tales - Single

Acoustic Tales - Single

  • Sidus
  • ロック
  • ¥612

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たまたま聴いたこちらのポストロックのシングルがとても良かったので、ふいに散文詩を書きたくなり、久しぶりに詩を書いた。

少し時間を置いたこともあってか、ここのところややナーバスな詩を書くことが多かったので、いくらか硬質な雰囲気になった気がする。

詩を書いていて思い出すのは、詩人と仰いでいたひとのことで、そのひとはもう詩を書くのをやめて会えずじまいになってしまったけれど、私はただひとりの詩人だと思っている。

彼に捧げるために詩を書きつづけて十一年目の夏がきた。

夏はいつも残酷で私を部屋に押しこめてしまう。起きているのもつらい日々がつづくし、冬生まれで暑いのは苦手だしで夏は嫌いだ。