人に貸した本ほど読みたくなる
世の中の本好きの夫婦のあり方はよくわからないが、私たち夫婦はしょっちゅう本を貸し借りする。
とはいってもすぐに手に取って読むかというと、そういうわけでもなく、あくまでも優先順位は手元にあって自分の読みたい本、その次に自分が最近気になっている本や欲しい本、そして相手が貸してくれた本ということになる。
自然と相手の勧めた本を読むペースは遅くなり、貸した本がしばらく返ってこないのは、交際していた当初からあまり変わらない。
それでも読んでくれればまだ御の字で、お互いに気が乗らなければ読まないので、貸した本が返ってくるのは一年後ということもある。
これはあくまでもお互い様の話なので、どちらが悪いということでもないのだけれど、貸した本ほど読みたくなってしまうことに最近気づいた。
たとえば私は今、少女漫画『フルーツバスケット』と、『自衛隊メンタル教官が教える
心の疲れをとる技術』を貸しているのだけれど、どちらも今すぐ読みたい。
逆に主人からは『よつばと!』と『ヤバい集中力』を借りていて、主人曰く『ヤバい集中力』は再読したいそうだ。
それにしても、私だって貸す前に一度読んでいるのだから、今すぐ再読しなくてもいいようなものを、「人間関係を懇切丁寧に描いた物語を読みたい」「家事に励む、素敵なヒロインの生き方を見習いたい」と思うと『フルーツバスケット』が真っ先に頭に浮かぶし、「ムリをできるだけなくして創作をつづけたい」と考えると『自衛隊メンタル教官〜』が頭をかすめる。
きっとお互いにとって「単なるおすすめ」ではなく、そのとき自分が良いと思っているものを勧めるから、どうしてもこのようなことになってしまうのだろう。
漫画と実用書という点では偶然一致しているが、あらかじめ示し合わせたわけではない。20代の頃は互いに文学一辺倒だったが、近年は実用書をよく手に取るようになった。共に生活をするうちに、少なからず影響を与え合っているのかもしれない。
それにしても『フルーツバスケット』は全23巻で、電書で買うとなるとまた手間だし、好意で貸した手前もあり、いきおい互いが読み終えるまで待つしかないということになる。なんともままならない。
仕方なく別の本を手に取って、自分の腹をすかせた心をなぐさめる他ないのだ。
そうして迂回しているうちに、また新たな出会いが待っていると期待して、とにかく心の欲するままに本を読む贅沢を存分に味わいたいと思う。