2020.10.08 ホラー小説と表紙デザイン

うつの症状が思わしくなくて読書が捗らない一日だった。

ひたすら睡魔に身を食まれてしまい、起きたのは昼頃で、雨が降りしきる中、『るんびにの子供』所収の「柘榴の家」についてぼんやり想いを馳せていた。

最後の台詞がじわじわと効いてきていて、読んだ当初はそこまで怖くなかったのに、沈鬱な室内にいると、だんだん怖さが身にしみて感じられる。

こういう日にホラーを読むのはなかなかおそろしい。

『るんびにの子供』を読み進めたものの、一編だけ読んでいろいろと考えてしまい、なかなか次に進めない。

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読んだのは「キリコ」のみ。

呪われた血族の話は、プロットとして少しばかり構想を練っていたのだが、それは異世界ファンタジーのつもりで書いていたので、ホラーでほとんど似たようなことができると知って、少し救われた気持ちになった。

もっとも、手あかにまみれてしまったそうした設定を、いかに料理するかにかかるわけなのだが、この短編では語り手そのものにホラー要素を纏わせるという手法を使っていて、なかなか面白い。

語り手ふたりの年齢がはじめは三十代ぐらいに思えたのに、のちに老婆だったと明かされるトリックが際立っていて、肝心の呪われた血族云々よりも、よほどそちらの方が怖い。さらに老婆が戦前の出来事を昨日の出来事のように語るというところにも底知れぬ怖さがある。人間の認知における時間のひずみというものを上手く利用しているのだ。

 

すっかり短編ならではのあざやかさに魅せられてしまった。

横溝正史を除くと、この作品が本格的なホラーを読むにあたってほぼ初めてとなる作品になるが、今のところいずれも粒ぞろいだ。

最後まで早く読みたいという思いもあるけれど、この秋の長雨の憂鬱な日とともにじっくり味わいたいとも思ってしまう。

 

またホラーの短編集といえば、とあるサイトを見ていて、津原泰水『綺譚集』がホラーとして取り上げられていた。

綺譚集 (創元推理文庫)

綺譚集 (創元推理文庫)

  • 作者:津原泰水
  • 発売日: 2008/12/19
  • メディア: 文庫
 

 はじめの短編数本を読んで肌に合わずに投げ出してしまったのだけれど、もう少しじっくり腰を据えて読んでみるのもいいのかもしれない。

幸いにもまだ手元に置いているので、この短編集を読み終えたらとりかかりたい。

以前に比べて、文章の文体にこだわることも少なくなってきたと感じているところでもあるし。

 

さらに読みたいのは乙一の別名義・山白朝子の作品。

『死者のための音楽』は昔買った記憶があるのだけれど、度重なる蔵書の整理の中で失われてしまった。

当時は ヴァニラ画廊にも個展を観に行ったことがある下田ひかりさんの手がけた表紙の文庫本で売られていて、表紙買いしたのを覚えている。

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今となっては別の表紙になってしまっているようなので、整理の過程で残しておけばと少し後悔している。

ちなみに下田ひかりさんのイラストは下記サイトでいくつか見ることができる。

kurum-art.com

2014年以降は個展を催していない様子なので、画業をつづけていらっしゃるのか定かではないが、あの時個展に伺っておいて良かったなと感じる。

 

またこうして並べてみると、ホラー小説というのはなかなか表紙イラストが美しい。

『るんびにの子供』の表紙を手がけた後藤温子さんのTwitterアカウントもフォローさせていただいた。

twitter.com

美術館になかなか足を運べない中、アーティストの方々が、オンラインで絵を発信してくださることのありがたさを改めて感じる。

 

まだ自分の居場所としてのホラーを開拓できずにいるが、少しでも多くの作品に触れて、その世界の隅に自分の座る場所を作れるといいなと思う。

そのためにもこうしてホラーについてじっくり考える時間を設けるようにしたい。