もともとリアルのイベントに折り本を出展しようと思っていたのですが、コロナ禍の影響で中止になってしまったので、Web開催となったおうちdeちょこ文に参加しようと思っています。
◆目次◆
作品について
おうちdeちょこ文の〆切が6/21と迫る中、6/10ごろからネタ出しをして書いていました。
タイトルのall the good girls go to hellはBillie Eilishの同題曲から取りました。
奇しくも不倫が世間を賑わせることになるタイミングで、この作品を書くことになってしまい、またしてもセンシティブなラインすれすれになりました……。決して意図したことではないのですが。
一応内容を紹介しておくと、母を亡くし、様々な女と関係を持つ地獄絵師の父の元で暮らす少女・りんが、とある経緯を経て地獄のような日々から脱して尼僧になるというお話です。
全体で3000字弱の掌編になります。
構造としてはいつものことながら序破急を踏まえていて、宮沢賢治「永訣の朝」のオマージュや、日本最古の仏教説話集『日本霊異記』のオマージュが入っています。
日本霊異記は岩波全集本を買おう買おうと思ってまだ買えていないので、そろそろ恩師に(概念上の意味で)叱られそうです。
もともとゼミで日本霊異記を講読していたということもあって、印象深い話がいくつもあり、それをベースにこの物語を組み立てようと考えたのでした。
参考資料
参考資料として参照したサイトと、本当は読まなければならなかったものをいくつか載せておきます。
地獄絵
私は主に過去に訪ねた美術館の展示とWEBで参照したのですが、その成立の背景なども本を通じてインプットできていれば尚良かったなと思います。この辺りは参考になりそうですね。
地獄の描写
地獄の箇所の描写の出典として読んでおきたかった本です。
今回は21日〆切ということで時間がなく、複数のサイトを辿って、ほぼそのまま原文を引用しているサイトを参照しましたが、元史学学徒としてはあるまじき行為です。はい。 原典に当たるのは大事です。
御仏の描写
地蔵菩薩の衣の名前を調べるのに参照。
和樂は信頼できる美術雑誌なので、まず間違いないだろうということで。
本当はこういうガイドブックが一冊手元にあると便利かなと思います。
江戸時代の女流日記文学
ヒロインが日記を書くシーンが重要なファクターを占めているので、江戸時代の女性が日記を書いていたという史実を確認する程度に参照。
調べてみるとこういう資料もあるようです。
校正で気がけたこと
これは備忘録的にまとめておきます。
・指示語チェック
あの、その、この、それ、これ、など多用していないかどうかチェックしました。
人の文章を校正するときも、まずこれは最低限やります。
多用しているとどうしてもこなれない文章になってしまうので、どうしても必要なところだけ残していますが、今回はさほど赤が入ることはありませんでした。
・語尾チェック
同じ表現の繰り返しなど、単調になっていないかチェック。これは初稿の段階でクリアできていました。いつものようにリズム感をつけた文体はさほど意識しなかったので、単調になっているのではと危惧していましたが、いい具合にリズム感ができていたので、ここは問題ないかなと。
・動作に関する語のチェック
人の校正をしていて気になるところその二。「見る」「言う」など、書く必要のない動作に関して言葉を費やしていないかチェックしました。ここもおおむね初稿の段階でクリアしていたので、さほど気になるところはありませんでしたが、より洗練させるために表現を変えた箇所もありました。
・漢字を開くか否か
今回一番気を遣ったのがこの判断で、初稿の段階では文章が真っ黒だったので、大幅に漢字を開きました。少女が主人公ということもあり、また時代モノということもあって、和語を大事にしたいという気持ちがあってのことです。
和語と漢語の扱いについては谷崎潤一郎『文章読本』を念頭において行いました。
和語を意識して、二字熟語の漢語は和語に直し、四字熟語は極力使わないようにしました。
「仏道修行」→「修行」、「箇所」→「ところ」など。
それからルビが必要になったり、やや読みづらい漢字はほぼ開きました。
「綴る」→「つづる」、 「拙い」→「つたない」、「憚る」→「はばかる」など。
また漢字が続くところはいくつか開きました。
「着崩す」→「着くずす」、「花盛り」→「花ざかり」など。
・改行を増やすか否か
特に序破急の序の部分が詰まっていたので、だいぶ改行しました。
あまり改行しすぎるのは好きではないのですが、時代モノを描いた皆川博子『妖恋』は思い切った改行をしていたので、いくら文章にこだわりがあっても読みやすいということは大事だろうということで。
特に今回は初めて出展するイベントということで、はじめて出会うお客様は読みづらい文章を読む気にはなれないだろうなと思います。
またうさうららさん主宰の手製本アンソロジーに寄稿させていただいた、江戸時代が舞台の掌編「墨絵の猫」でも、行間が詰まっていると読みづらいということを痛感したという経験もありました。
執筆の段階では行間をひたすら詰めて書く方が好きなのですが、それを「解凍」して読者に提示するということは、どうしても必要なのかなと感じます。
それも含めて作品を公開するということにつながるのではないかなと。
・語彙のチェック
より適切な表現を用いているかどうか。最終段階で赤入れをしました。
語彙にこだわりすぎるとキリがないので、今回は最低限「これはおかしいな」という部分を直しました。「心やすらかに生きよ」→「すこやかに生きよ」など。
これほど段階を踏んで徹底的に校正ができるのは掌編ならではで、とてもいい練習になったと感じています。
今後ともこういう手順を踏んで校正に励んでいきたいです。