いつもお世話になっている祐真(スケザネ)さんから、昨年酒アンソロジー『生きは酔々 二軒目』に寄稿した「山妖記」にご感想をいただきました。
この小説は和漢折衷妖怪ファンタジー短編作品で、妖と人間の血をめぐる物語です。
主人公は盲目で妖怪の母親の元に生を受け、やがてその母と対峙するというストーリーになっています。
以下、本がお手元にある方も、手元にはないけれど興味を惹かれた方も、ぜひご覧下さい。
以下、祐真さんからのお言葉の引用です。
これは私の読んだ嘉村作品の中で、最高傑作ではないでしょうか。
嘉村作品の強みである設定の魅力はそのままに、弱点であった設定や詰めの甘さが徹底的に煮詰められて、見事というほかありません。
特に血の色について、主人公が盲目だからこそ、苦しみ疑惑を深めるというのは設定と内容の深みが手を携えた、書き手としては会心の出来でしょう。
草花、動物、そしてそれを五感によって書き分ける技は芸術の域で、もしもこれで長編が書き切れたらえらいことになりますね。加えて日本語のレベルに磨きがかかりました。
嘉村作品は以前から日本語については出色の出来で、それこそ日本語が売りの一つでしたが、より完成度が上がったように思います。
これだけ接続詞が少ないのに、スピード感とテンポのある展開を実現しているのは素晴らしい。接続詞があるとどうしても理屈っぽくなり、作品にそぐわないのですが、さりとて接続詞がないと文章として読みにくい。そのジレンマはほとんど感じさせません。
物語の交通整理、全体の構成を示すところ(特に冒頭のめまぐるしい説明)は改良の余地がありそうです。
祐真さんとは昨年知り合って、その古今東西の書物を渉猟するバイタリティと知識量には日々圧倒されています。
ほんのちょっとご紹介しておくと、
好きな本はなにかとご質問いただいたので、良い機会と、徹底的に書き出してみました。
— スケザネ (@yumawata33) 2019年1月11日
漏れがあるかもしれないけど、思い起こせる限り現時点のベストです。 pic.twitter.com/jXl5GTLLBu
……こういうお方です。彼の言葉が決して身贔屓ではなく、多大な読書量に裏打ちされた言葉なのだということがよくわかると思います。
ちなみに祐真さんはパセリ流星群でもお世話になっていたお方で、今は森見登美彦の『熱帯』にお熱なようです。
読書会などを通じて、彼の作品への読み込みの深さと的確さにはいつも驚かされますが、こちらも圧巻です。ぜひご覧下さい。
ちなみに彼からは拙作「翠の鳥」にも懇ろなご感想をいただいております。
ぜひ併せてご覧ください。
ちなみにこの「翠の鳥」は、合同誌『かもめソング』頒布および完売から一年が経つことを踏まえて、5月にカクヨムにて公開する予定です。
これまであまりネットに小説を載せるということをしてこなかったのですが、これもいい機会かなということで。
マシュマロで「嘉村さんの作品を初めて読むならどれがおすすめですか?」という質問をいただいて、とっさに『文芸ラジオ一号』に寄稿した仙界ファンタジー短編小説「翡翠譚」をおすすめしたのですが、こちらはすでに絶版になっているので、そういう意味でも私の小説を知っていただくいい機会になればいいなぁと考えております。
絶版になってても古書で買うから読んでもいいよ、というお方はこちらをぜひ。
ここ四年ほど書いてきた小説たちの原点はすべてこの「翡翠譚」にあると云っても過言ではありません。この小説を書かなければ、少なくとも今の私はいないなぁと感じています。プロの作家の方に見ていただいた作品でもあるので、思い入れはひとしおです。
まだまだこれからも力作を書いていけるように、今年も精一杯励んでいきたい所存です。どうぞ今年もよろしくお願いいたします。