2017年美術鑑賞まとめ
◇西洋美術
大エルミタージュ美術館展@森アーツセンターギャラリー
◇日本美術
絵巻マニア列伝@サントリー美術館
女性美と自然美―神奈川とのゆかり―@鏑木清方記念美術館
不染鉄展@東京ステーションギャラリー
生誕120周年東郷青児展@損保ジャパン日本興亜美術館
特別展示「鏡花夢幻」原画展 波津彬子が描く泉鏡花の世界@金沢21世紀美術館
◇東洋美術
董其昌とその時代―明末清初の連綿趣味―@東京国立博物館東洋館
◇文学館
鴎外の「庭」に咲く草花 牧野富太郎の植物図とともに@森鴎外記念館
新資料から見る谷崎潤一郎―創作ノート、日記を中心にして@日本近代文学館
◇博物館など
古代オリエント博物館常設展
和のあかり×百段階段@ホテル雅叙園東京
◇ギャラリー
ギャラリー青騎士
西條冴子人形展“Fabula Immemorata”@パラボリカ・ビス
西條冴子人形展“Digitus Medicinalis Canariae”@サイト青山
計22
例年に比べて、今年はあまり美術館に通えなかったように思ったのだが、終わってみればそこそこ通っていたらしい。だがこれも常なることながら、観に行きたいと思いながらも見逃してしまった展示は数多い。
根津美術館や東京国立博物館など、常ならば一年のうちに何度も行く美術館にも今年はなかなか足を運べず、もどかしい思いをした。特に東京国立博物館に関して云えば、秋の東洋美術の特集展示に行けなかったのが本当に心惜しい。
そんな中でもミュシャ展には二度足を運び、人混みをかき分けながらスラブ叙事詩を堪能できたし、大エルミタージュ美術館展ではロココの雅宴画を観られたので、西洋美術に関してはほぼ満足と云っていい。
例年、どうしても西洋美術よりも日本美術の展示に赴くことが多いのだが、そんな西洋美術に関心のない私でも楽しめた展示となった。
日本美術に関しては、主に近代以降の絵画や工芸品を観る機会が例年よりも多かった。
数ある美術館の中でも、山種美術館には三度足を運んだ。
その中でも、日本画の教科書展は、はじめてかもめメンバーたちと展覧会を共に観られたので意義深かったし、川端康成の「反橋」の連作を愛読している私にとって、作中にも名前が出てくる川合玉堂の展覧会は、期待以上の展示だった。
さらに不染鉄の存在はこれまで知らなかったのだけれど、その文人画のような作風には大いに魅せられた。
また東郷青児の絵はこれまでちらほらと観たことはあったのだけれど、今回まとまった形で絵を観られて、ボリュームの豊富さと、内容の密度の濃さに満足した。同行したかもめメンバーの御影あやさんも気に入ってくれたようで、その後の読書会と併せていい思い出になった。
唯一観た仏教美術の展示となってしまった西大寺展は、三井記念美術館ならではの展示と云えるだろう。ここ最近は毎年地方の寺院の展覧会を催してくれるので、毎回楽しみにしているのだ。西大寺展では、特に奈良・元興寺の如意輪観音坐像に惹かれた。推し仏がもう一体増えたように思う。
そして振り返ってみれば、今年は例年よりも文学館に足を運ぶ機会が多かったようだ。
彼が鴎外にハマっていたこともあって訪ねた鴎外記念館の展示では、牧野富太郎の植物画に魅了されるとともに、鴎外の草花に向けるまなざしの優しさを感じた。
また鎌倉で訪ねた鎌倉文学館での漱石の展示では、私が心の支えとしている鈴木三重吉宛の書簡が見られたのが何よりもうれしかった。
日本近代文学館の谷崎の展示では、「少年」に付せられた鏑木清方の挿絵が見られたり、「武州公秘話」のあらすじに惹かれたりなど、谷崎ファンとして記憶に残る展示となった。
ちなみに併設された川端康成の展示で、岡本かの子の名を見つけて「人生仏教読本」を読みはじめたのだが、未だに読み終えられずにいるので、来年の課題としたい。
そしてなにより、今年は泉鏡花記念館に行けたのがうれしかった。
学生時代、泉鏡花の文学に夢中になっていた頃からの念願だったので、今年叶えられて本当によかった。
折しもちょうど金沢21世紀美術館で『鏡花夢幻』を手がけた漫画家の波津彬子さんの原画展も催されていて、本当にタイムリーだったなと感じる。
残念ながら5年に一度の金沢泉鏡花フェスティバルの時期とは重ならなかったけれど、それもまたご縁があればと思う。
末尾になったが、昨年の美術鑑賞まとめも載せておきたい。
「来年は西條冴子さんのお人形を生で観られるといいなあとぼんやり思っております」と書いていたのだけれど、宿願叶って、今年は二度も個展に足を運ぶことができた。
来年もよい美術展とのご縁に恵まれますように。
最後になってしまったけれど、忙しい中にも、美術館巡りに付き合ってくれた彼や家族、そして友人たちに心から感謝を。