広寒宮

アマチュア作家・雨伽詩音の活動報告その他諸々

ネプリ千字掌編「仙魚記」振り返り&ひとり文学談義

7/1〜7/8までネプリを配信しておりました。こちらでの告知が遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでしたが、おかげさまで無事に配信を終えることができました。

企画に乗っかったものでないものとしては初めての個人配信だったので、どなたも出力してくださらなかったらどうしよう……と不安だったのですが、目標だった二桁を超えることができ、ほっとしています。

企画中、宣伝が何かと多くなってしまい、恐縮至極ではありましたが、おつきあいくださった皆様、出力してくださった皆様、そしてご感想をくださった皆様、本当にありがとうございました。

 

いただいたご感想を掲載させていただきます。

 

文体を褒めていただけることが多く、また伝えたかった幻想怪奇譚の美の世界を丁寧に受け取って下さった方が多かったことは本当に書き手としてありがたい限りでした。

これからもますます精進して言葉を磨いて参りたいと思います。

 

作品の裏話のようなものをちょっとしておくと、この作品を書く直接的なきっかけとなったのは、こちらの李在の「琴高乗鯉図軸」にありました。

f:id:evie-11:20190709122850j:plain

こういう掛け軸を床の間に掛けて、日がな一日それを眺めながら暮らしているニート若隠居がいたらいいなぁ……という妄想が膨らんだのですが、そこからまったく話が動かず、若隠居は絵の前から動こうとしないので、背中に鞭打って働いてもらうことにしました。

そこから話が転がって最後までたどり着けたので、やはりニートは働いた方がいいのだなぁということを我が身のことのように思いました……。私は病気療養中かつ求職中の身ではあるのですが。

あとは師弟関係のすったもんだに関しては、素地のようなものが一応あって、その素地について語ることは控えておきますが、何かとトラブルが起きやすいのも師弟関係でもあるので、そこをもっと掘り下げて書けたら、よりストーリーとして動きのある話になったのではないかと思います。千字では到底収まりませんけども。

 

そこから怪異譚に持っていたのははじめから念頭にあったことで、ただ人間と鯉との恋物語をその両者の関係だけで終わらせたくなかったのかもしれません。人間の愛憎のただ中に鯉というヴィーナスがいるというのは、特段意識したわけではないのですが、たとえば谷崎潤一郎の『猫と庄造とふたりの女』もそうですね。

猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫)

猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫)

 

 結局庄造にとって最も愛すべきものが猫であったように、主人公にとって至高の美と呼べるものは鯉を置いて他になかったのでしょう。

 

それが女に化ける夢を見るというのは古今東西の様々な物語に描かれていることで、どれを手本にしたというわけではないのですが、その後、弟子の性が反転して鯉になるというのは自分にとって結構大事な要素なのかなと思います。

私の書く男性はどうしても女性的になってしまうのですが、そういうマージナルなセクシャリティというのが昔から好きで、その原点にあるのは『南総里見八犬伝』の犬塚信乃や犬坂毛野、萩尾望都『11人いる!」のフロルベリチェリ・フロルの存在が大きいのかなと。

南総里見八犬伝〈1〉妖刀村雨丸

南総里見八犬伝〈1〉妖刀村雨丸

 
11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)

 

 

とうらぶの最推しキャラも宗三左文字ですしね……。

f:id:evie-11:20190709125714p:plain

思春期の頃は、自分自身も性別が曖昧だなと感じていたので(自分が女の子であることを受け入れることができたのは、大学三年生頃になってからのことでした)、そういう境界がぼやけた男性に強く惹かれるのだと思います。 

 

そして男であって女に近しい存在というと、浮かんでくるのは女形ですが、到底女形を書ききれるだけの技量は今の私にはないので、皆川博子の『花闇』を強く推しておきます。

花闇 (河出文庫)

花闇 (河出文庫)

 

これを超える歌舞伎小説はなかなかないのではないかと。赤江瀑の歌舞伎ものをベースにして生まれた作品だと聞いてはいるのですが、私はどちらかというと赤江瀑よりも皆川博子派です。

そう云ってもこちらにある『花夜叉殺し』を読んだ限りで、彼の作品集も積んで久しいのですが……。

f:id:evie-11:20190709130516j:image

 これを機会に読んでみるのもいいのかもしれませんね。