広寒宮

アマチュア作家・雨伽詩音の活動報告その他諸々

Twitter300字SSメイキング

凪野基さんのTwitter300字SSメイキングの記事を拝見して、私も今回の「水」のお題はなかなか難産だったので、メイキングを書いてみようと思い立ち、こうして記事にすることにしました。

凪野さんの記事はこちら。

bluegray.self.jp

 
私は詩を含め、1000字未満のものはほぼ即興で書いているので、メイキング呼べるほどのものはないのですが、今回の「水」ではどうしても書きたかったことがありました。
それは当日見た夢。ちょっと変わった名前を持つ従姉妹(初対面の人にはその名前からお寺の子だと思われるとのこと)が夢の中に尼僧として出てきたのです。
お寺らしい見事な障壁画を背に、僧衣を纏って座っている姿はなんだかありがたいほどでした。
私はわりと変わった夢を見る方なんですが、こういうありがたい夢は数えるほどしか見ないので、『日本霊異記』よろしく文章にしたためておきたいと思ったのでした。 
日本霊異記 (新日本古典文学大系 30)

日本霊異記 (新日本古典文学大系 30)

 

 

その夢のイメージを念頭に置いて、即興で書きはじめたのですが、まず一番大事なのは出だしです。ここで読者の心を掴むと同時に、自分も作品の中に入っていかなければならないので、今回は「ああ」という嘆きから入ることにしました。最初は「ああ、清水……」だったのですが、字数の関係で削らざるを得なくて「ああ清水……」になっています。

 

そうして書いているうちに中西進先生の『万葉の秀歌』で読んだ、万葉集の歌

稲つけばかかる我が手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ(巻14 3459)

が脳裏をよぎり、これも入れたいと思ったのと、五木の子守唄のことが頭をかすめたので、このモチーフも取り入れることにしました。 

「万葉の昔から〜」はこの歌を、そして「哀しい子守唄」は「五木の子守唄」から来ています。

万葉の秀歌 (ちくま学芸文庫)

万葉の秀歌 (ちくま学芸文庫)

 

 

 

となると、主人公は女中働きをしている女性だな、と。水仕事で手も荒れているけれど、実は『化鳥』や「縷紅新草」に出てくる鏡花の描くヒロインよろしく、元は良家の出身だったりして……という妄想が広がり、没落した良家の出身ということにしました。

絵本 化鳥

絵本 化鳥

 
縷紅新草

縷紅新草

 

 

この間すべて即興で書いているので、頭の抽斗にあるネタがすべてです。Twitter300字SSや普段書いている詩は、頭にあるネタの組み合わせで書いています。村上春樹

イマジネーションとは記憶のことだ――ジェームズ・ジョイス

という引用を『職業としての小説家』の中で記していますが、本当にその通りだと思います。

職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)

 

 

そうして書き上がったものを見ると480字近くになりました。普段はだいたい300字以内に収まることが多いので、ここから削るのが大変でした。

書きすぎているなと感じたのは一番書きたかった尼僧のシーン。思い入れがある分、余分な描写や説明も多く、できるだけ最低限で伝わるように削りました。イメージの世界を文字に落とすと、どうしても余分な言葉が出てきてしまったり、説明口調になってしまったりします。それを女性の語りに落とし込む上で、できるだけ指示語を削り、想像している姿のすべてを書くのではなく、ここだけは抑えておきたいというところだけを選んで残しました。

 

それから細かな云い回しで

「日夜を問わぬ」→「日夜を置かぬ」(意味がかなり変わってきてしまうので)

「明日の我が身を嘆くのも慣らいのうち」→「明日の我が身を嘆くのも習い性」(語感の問題)

「花のような唇」→「花の唇」(「ような」が冗長で不要)

という書き換えを行いました。なんとなく「習い性」で云い切ってしまった方がすっきりする感じがします。

 

そうして出来上がったのがこちらになります。

https://star-bellflower06.tumblr.com/post/185291032850/%E6%BE%84%E3%82%80%E3%81%8C%E5%A6%82%E3%81%97

star-bellflower06.tumblr.com

 

出来映えの如何はともかく、だいたい即興で作品を書く時には、ほとんど小一時間の間にここまで完結します。ネタを抽斗から引っ張ってきて組み合わせ、言葉を削ったり磨いたりするのは詩もTwitter300字SSも変わりません。

今回メイキングを書いていて、自分の頭の中を可視化する楽しさと面白さに気づきました。

またどこかでご縁があればやってみたいです。

 

ちなみにこれまでに書いたTwitter300字SSはこちらにまとめています。ぜひ併せてご覧下さい。

kakuyomu.jp