広寒宮

アマチュア作家・雨伽詩音の活動報告その他諸々

【感想】オカワダアキナ「ぎょくおん」

Twitterでひょんなことからオカワダさんの本を購入するに至り、夕方ごろ届いたのでさっそく読ませていただいた。

 

f:id:evie-11:20170131185636j:plain

 

安定剤の副作用によって乳汁が分泌されてしまう青年・郡司と、旅館で郡司と共に働く外国人の青年・アランをめぐる物語。

全編を通して乾いた空気感が漂うなか、郡司のペシミスティックな独白で物語は進む。出生の事情や、さまざまな性体験を通じて培われた彼のほの暗さには湿度がない。その心地よさがだんだんくせになる。

人とうまく関われない姿や、セックスへの「あきらめ」にも似た態度は、どこか私にも通じるものがあった。白状すると、私も同じ副作用を持つ薬を飲んでいた時期があったので、なおさら彼へのシンパシーをかき立てられ、一気に物語の世界に引きこまれていった。

同時に、くらげや煙草、ホームレスの男といったすべてのモチーフが物語にリンクし、さらなる物語へとつながっていくさまが実に気持ちがいい。詩的な言葉たちが辿りつく先に思いもがけない展開が読者を待っていて、最後に投下されるゲンバクの衝撃がずしんと胸に迫ってくる。

そんな中でもひときわまぶしく映るのがアランの存在だ。元バンドマンでかりそめの牧師という役柄もさることながら、会話をする感覚で主人公にセックスをもちかける。一見明るく、何も考えていないように見えて、実は主人公以上に闇が深いのはこの男なのではないかと思ってしまう。

バンドではないけれど、私はこのアランの描写を読んでいてEd Sheeranみたいな声で歌うんだろうなと思った。そんな声で郡司に聖書の一節をささやくのだろうとも。

などと書いておきながら、私は別段この小説を読んでいて腐女子として心をくすぐられたというわけでもない。ただどうしようもない男たちの、他にどうしようもない救済の物語だと思ってこの本を読み終えた。そのどうしようもなさに私は救われた気がした。