広寒宮

アマチュア作家・雨伽詩音の活動報告その他諸々

学術書を読むということ

専門的な勉強でもしていなければ普段学術書を読む機会はあまりないかもしれない。

忙しい日常のなかにあっては小説を読むことすらままならない、という人もたくさんいることだろうし、勉強のモチベーションを保つのはそう簡単なことではない。

人間は必要に迫られもしなければ楽な方向へ流されてしまうものだし、勉強というとなんだか堅苦しいイメージを持つ人も少なくないかもしれない。

それでもあえて学術書を読むメリットを挙げてみようと思う。というのも私自身モチベーションを保つのに苦心しているからなのだが。

 

まず一つ目はテレビやネットだけでは手に入らない知識が手に入る、ということ。当たり前なことのようでいて、このふたつに時間を費やしすぎる人は数知れない。というか、大部分はそうなのではないか。

たしかにテレビやネットは新たな知見を与えてくれるかもしれない。それでもそれはあくまでも「きっかけ」や「入口」に過ぎない。時が経てばすぐに忘れてしまうし、ネットやテレビが常に正しいとは限らないからだ(ネットなどは真否の分からない情報の方が多いこともまた事実)。自分自身で手を汚したり考えたりして身につけた知識だけが自分の血肉になる、というのは大学生活を振り返ってみてひしひしと感じていることだ。

テレビやネットを見ていて気になることがあったら自分の手で調べてみる。まずはそこからはじめてみるのもいい。そして一冊だけを読むのではなく、関連した本を何冊か読むことで批判力を身につけるのも大事なポイントだ。

複数冊読むことで異なる考えを学ぶことができるし、どちらがより妥当か考えるだけでも勉強になる。

かといってこの記事は勉強するのがいやだという人に無理に勧めるものではない。勉強したい人がすればいいのであり、勉強をはじめてみたいけれどなかなか一歩を踏み出せないという人の背中を押すものであればいいと願う。

 

そしてもうひとつは学術書は「どんな気分のときにでも読める」ということ。

さすがに疲れているときなどは難しいかもしれないが、物語と違って学術書はどんな気分のときにでも読めるという点でメリットがある。

勉強したい、というスイッチが入らなければなかなか表紙を開けないのもまた事実ではあるが。

読みたいと思うモチベーションを保つためにも、気になったことや考えたことを走り書き程度でいいのでメモに残しておくといいだろう。メモを読み返して「もっと知りたい」と思ったら、それがチャンス。尽きない知的好奇心は大きな武器になる。

付箋を貼るのも効果的だ。私の場合は出典を知りたいところと興味を持ったところ、本筋の要点などはすべて違う色の付箋を使うようにしている。それだけでもあとで読む祭の手がかりとなる。

 

最後は「小説などの創作に携わっている人にとって学術書はネタの宝庫」であるということ。

どこに新しいアイディアが転がっているか分からないのが学術書を読む際に一番楽しいことでもあるし、そのためにも幅広いジャンルの本を読んでみることをおすすめする。

私の場合、関心があるのはもっぱら古代日本の歴史や日本の民俗学などだったが、視点を広げてみると東アジアという世界がある。

古代日本において古代中国や古代朝鮮との交流は看過できないことであったし、宗教や文学などの諸文化、国のあり方に至るまで両国との関係は切っても切れない間柄にあった。それらの国々の歴史や習俗を学ぶことは日本のそれを学ぶ上でも重要なのだ。

幅広いジャンルについて縦横無尽に学べるということは大きなメリットだと捉えたい。

研究者のように綿密な研究はできないにしても、たとえ素人の手すさび程度に終わったとしても、そこから新たな創作が生まれるならば勉強してみる価値はたしかにある。

 

このように学術書を読むメリットはいくつもある。私が挙げたのは三つだけだったけれど、勉強の目的によってはもっとたくさんあるはずだ。

気になる資料を見つけたけれど、どれから読めば良いのか分からないという場合にはひとまず最新のものから読んで研究史の概要を把握するところから始めてみるといい。

いきなり分厚い本は難しいという人は、新書や一般書の区分に入るようなものから手にとってみることをおすすめするが、日本古代史などのジャンルは一般書や新書だとトンデモ本も数え切れないので、ひとまず歴史の教科書に目を通すことからはじめてみるといい。

もう少しステップアップしたいという人には通史を踏まえた上で吉川弘文館の歴史文化ライブラリーがおすすめだ。そこまで高価ではないし、最新の研究をわかりやすく、しかも興味のある事象に絞って読めるという点では申し分ない。吉川弘文館は名の知れた日本史専門の出版社だから、一般書に比べるとトンデモ説を唱える本も少ない。

もちろん一冊だけ読んで安心するのではなく、参考文献から芋づる式に他の本を読んでいくとなお良い。

研究者でなくても信頼できる文献を読むということは知識を積み上げて行く上でも大事なことだし、文献を見分ける目をやしなうこともまた大切なのだ。