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広寒宮

アマチュア作家・雨伽詩音の活動報告その他諸々

2016年美術鑑賞まとめ

ブログ

◇西洋美術

フランスの絵画と化粧道具、ファッションにみる美の近代展@ポーラ美術館

英国の夢 ラファエル前派展@Bunkamura ザ・ミュージアム

カラヴァッジョ展@国立西洋美術館

安曇野ジャンセン美術館常設展

ヴェネツィアルネサンスの巨匠たち@国立新美術館

デトロイト美術館展@上野の森美術館

 

◇日本美術

箱根美術館常設展

箱根彫刻の森美術館常設展

ほとけの教え、とこしえに。展@根津美術館

ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞展@Bunkamura ザ・ミュージアム

安田靫彦展@東京国立近代美術館

穎川美術館の名品展@松濤美術館

山種美術館 日本画アワード-未来をになう日本画新世代-展@山種美術館

北斎漫画展@太田記念美術館

山水涼景~鑑賞石の世界~@さいたま市大宮盆栽美術館

歌仙兼定登場@永青文庫美術館

鈴木其一 江戸琳派の旗手展@サントリー美術館

1797年、江戸の文化人大集合!-佐藤一斎収集書画の世界-展@実践女子大学香雪記念資料館

松島瑞巌寺伊達政宗展@三井記念美術館

円山応挙-写生を超えて-展@根津美術館

 

◇博物館

世界のブックデザイン2014-15展@印刷博物館 P&Pギャラリー

総合文化展(常設展)@東京国立博物館

刃文-一千年の移ろい-展@刀剣博物館

星の王子様ミュージアム常設展

真田丸展@江戸東京博物館

 

◇ギャラリー

-終わりと始まり- 金子國義展@Bunkamura ギャラリー

森馨 人形作品集出版記念展 Ghost Marriage 冥婚@Span art gallery

鏡花の書斎展@丸善丸の内本店ギャラリー

山尾悠子 歌集「角砂糖の日」新装版出版記念展@LIBRARIE6           

 

 

計29

各時系列順

 

去年のまとめはこちら

凍月庵 【美術鑑賞】2015年美術鑑賞まとめ

 

これでも頑張って西洋美術の展示を観に行ったつもりだったのですが、フェルメールレンブラント展を逃したり、ボッティチェリ展を逃したりと、相変わらず西洋美術に対してやる気のない一年でした。

 

それでもカラヴァッジョの絵画の数々は未だに脳裏に焼き付いていますし、ラファエル前派展がなければ春頃に西洋の方に軸が揺れることもなかっただろうなーと思います。ひいてはそれが海外文学に親しむきっかけとなっていったので、芸術に影響を受けた一年と云ってもよかったかもしれません。

 

日本美術の方でも根津美術館の展示等々、だいぶいろいろ抜けがあったものの、三月の箱根旅行で訪ねた箱根美術館の焼きものの数々に魅了され、焼きものの見方が変わったのが一番の収穫でした。

来年はトーハクで茶の湯の展示があるそうなので、今から楽しみです。

 

箱根といえば高村光太郎の彫刻に出会ったのも、今にしてみれば不思議な縁を感じます。九月の信州旅行では、安曇野碌山美術館が話題に上ったものの、結局訪ねずじまいになってしまったのが悔やまれてなりません。

当時は高村光太郎にそこまで関心がなかったのですが、上高地には行けたので、結果的には聖地巡礼ができたということで満足です。

 

日本美術では、今年は江戸時代の美術品が大半を占めてしまったので、来年は私の好きなやまと絵や、仏教美術の数々をもっと観られるといいなと思っています。

根津美術館興福寺梵天帝釈天が展示されるとのことで、今から楽しみです。それから三月には高麗仏画の展示も控えているとか。

 

そして仏教美術といえば、私は毎年三井記念美術館で秋に展示されるニッチな仏教美術が気に入っていて、一昨年は「琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」、昨年は「蔵王権現と修験の秘宝」、そして今年は「松島 瑞巌寺伊達政宗」展と足を運んできました。

来年は春に「奈良 西大寺展」が催されるそうなので、今から待ち遠しいです。

 

それから、今年は数年ぶりにアングラサブカル系のギャラリーに足を運ぶことができました。学生時代はひとりでスパンアートギャラリーやポスターハリスギャラリー、パラボリカ・ビス、マリアの心臓、ヴァニラ画廊等々に足繁く通ったものですが、ここ最近はすっかり脱アングラ路線を走ってきたので、久々に耽美な世界に触れられて刺激を受けました。

来年は西條冴子さんのお人形を生で観られるといいなあとぼんやり思っております。

はじめてヴァニラ画廊で観たときの衝撃が忘れられない伽井丹彌のお人形も観られるといいのですが、なかなか機会がないので、また対面できる日を心待ちにしております。

 

手短にコメントしようと思っていたのに、またまた長くなってしまいました。去年なによりうれしかったのは、泉鏡花の書斎展で再現された、鏡花の書斎を拝見できたことです。来年こそは、金沢に足を運んで泉鏡花記念館へ行けたらいいなあと願いつつ、今年のまとめとします。

文アルの国木田独歩に射貫かれました。

文アル

特務司書着任一ヶ月半にして、ようやく国木田独歩の耗弱グラを回収した。

 

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プライドは高いけれど、クールでそつのない、上品な青年だなあという第一印象で、二軍の固定メンバーとして働いてもらっていたのだけれど、私にとってはそれほど印象に残るというタイプのキャラではなかった。

しかしいざ耗弱状態になった彼はいつもの虚勢はどこへやら、覇気に乏しく、すっかり弱気になっている。

己の文学への自負心が強いのは、挑みかかった壁の高さを知っているからこそでもあり、その不安を常に抱えているからなのだなと気づいた。

 

そういう彼の姿にすっかり心打ち抜かれてしまい、人間、不意打ちを受けた時ほどキャラクターの魅力にとりつかれてしまうのだなと感じた。

ちなみにどれぐらいの衝撃だったかというと、家族では知らぬ者とていないお風呂嫌いな私が、頭を冷やそうと即座にお風呂に飛び込んだレベルである。

 

ゆず湯に浸かりながら、あれこれ思案をめぐらせていると、文アルの国木田独歩の姿に「バッテリー」の原田巧が重なった。

彼もまたプライドが高く、周囲には理解されないものの、投手としての才能はぬきんでている少年で、作中の登場人物に「姫さん」などと軽口を叩かれる。

 

文アルの国木田独歩も、この「姫さん」に当たるなあと思い至ったが、「姫」とはいっても、昨今ちらほら見かける「プライドが高い美人な(あるいはかわいい)男性キャラ」像には彼は当てはまらない。

もちろんそういう美人にも魅力はあるのだろうけれど、独歩にはそういうあざとさのない、青年の自負のような青臭さが感じられるのが、私には好印象だったのだ。

文学を志した青年ゆえの懊悩とか、葛藤がありありと伝わってくるのがたまらなくいとおしいと思ったのだ。

だからここはあえて(うちの図書館では)彼を原田巧とならぶ「姫」ポジとしたい。

 

それにしても、文アルはつくづく予想外な方向から攻めてくるなと感じる。

これまでの遍歴から考えてみても、もともと谷崎や荷風といった耽美系のキャラに走る予定でいたのに、高村光太郎に転がり落ちてしまったし、今日はこうして国木田独歩の魅力に惹きつけられてしまった。

そういう文アルがとても好きだ。

2016年に読んだ同人小説

書評 読書メモ

今年は同人小説に親しんだ一年になった。

自分自身も文芸同人サークル「かもめ」を立ち上げたこともあり、同人小説に触れるおもしろさを改めて感じている。

創作同人イベントとしては、昨年秋の文フリに行ったきりだったけれど、推し作家さんのご本を通販で買うことが増えた。

そこで、今年読んだ同人小説について振り返ってみたい。

 

佐々木海月さん

Twitterがきっかけでご本を購入させていただいた。

昨年webで購入した『星の指先』が気に入ったので、今年は『夜さりどきの化石たち』と、新刊『フリンジラ・モンテ・フリンジラ』を購入。

『フリンジラ・モンテ・フリンジラ』に関しては、すでに感想の記事を書いた。

 

evie-11.hatenablog.com

『夜さりどきの化石』たちに関しては、近いうちにじっくり読み返してから感想を書くことにしたい。

ここのところ体調が安定しないこともあって、なかなか読書がはかどらないのだが、そんな中でも彼女の小説は静かに、そしてやさしく私に孤独を味わせてくれる。

 

 

それから海月さんのご本がきっかけで、彼女が参加なさっている深海×神話アンソロジー『無可有の淵より』も購入した。

感想の記事はすでに書いたので貼っておく。

evie-11.hatenablog.com

このアンソロジーで新たに気になる作家さんたちに出会えたので、やはりアンソロジーはいいものだなぁと改めて思った。

中でも気になったのは彩村菊乃さんと孤伏澤つたゐさん。

今後、個人誌の方もぜひ購入させていただきたいと思う。

 

 

唐橋史さん

『青墓』を読んですっかり世界観に魅了され、先月には『出雲残照』を拝読した。

以下、読書メーターの私の感想より転載する。

 

◇『青墓』

青墓

青墓

 

去年秋の文フリで買ったまま放置していたのをようやく手に取った。読みはじめてみると勢いが止まらず、一気に読了。遊女宿「青墓宿」を舞台に盲目の遊女獅子吼午前を軸として物語が進んでゆくのだが、登場人物たちのバリエーションの豊かさ、プロットの際立つストーリー展開に魅了された。循環してゆく構造なのは途中で察しがついたけれど、無理のない筆運びでうまくできているなぁと感嘆した。和風幻想小説好きにはぜひ読んでいただきたい一冊。

 

◇『出雲残照』

出雲残照

出雲残照

 

WEBにて読了。記紀神話好きにはたまらない、ヤマトと出雲をめぐる物語。ヤマトタケル伝説に根ざしたヤマトタケル像に胸がきゅんとしましたが、それにも増して張旦から見たイズモタケルのぐう聖然としたキャラ造形がツボでした。などと書くと萌えに傾いた感想になってしまいましたが、神話のリノベーションの新たな形を見いだせた気がします。張旦の一人称視点で描かれているので「物語ること」を意識した古事記の再解釈としてとても良かったなあと感じました。ぜひ冊子を手元に置いておきたい作品です。

ちなみにこちらの『出雲残照』は下記リンクから無料で読めるので、ぜひ。

 

出雲残照 - エブリスタ - 無料コミック・小説投稿サイト

http:// http://estar.jp/_novel_view?w=24402275

2016年のベスト10冊

読書メモ

 振り返ってみれば、今年は充実した読書生活を送れた一年だった。

山尾悠子に出会ったのも、ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟』を読んだのも、皆川博子に再会したのも、新選組にハマったのも、宮沢賢治の世界に入り浸ったのも、朝吹真理子円城塔といった現代作家を発掘できたのも、高村光太郎の詩に救われたのも今年だった。

そういうわけで10冊に絞るのはなかなか難しいのだけれど、昨年もなんだかんだでランク付けしてしまったので、今年もやってみようと思う。

 

1|ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

 

 

 

カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)

 

 

 

カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)

 

 

 

小説を読んでいて、自分自身の内面をすべてさらけ出してもらったという体験は、これまでほとんど記憶にない。もちろん芥川龍之介太宰治にはその力があったけれど、自分の醜いところも美しいところも、すべてがここに書かれている――そう思わずにはいられない、希有な読書体験ができた。

キリスト教との関わりを模索した一年でもあったので、もう聖書はこの『カラマーゾフの兄弟』でいいんじゃないか、とさえ思ってしまう。ゾシマ長老の説教にどれほど心救われたことだろう。

付箋を貼る手が止まらなくて、上巻中巻は付箋だらけになってしまった。

そういう本に出会えたことに心から感謝したい。

 

 

2|高村光太郎高村光太郎詩集』

 

文アルから軽率に転んで読みはじめたものの、気づけばどんどん史実の彼にのめり込んでいった。本がのどを通らなくなっても、彼の詩だけは私の心に響きつづけている。飾り気がなく、それでいて美しくまっすぐな言葉は、幾百の美辞麗句よりも心に迫ってくる。

上から差し伸べられる言葉には、救いはあるけど共感はない。高村光太郎の言葉は上から差し伸べられるんじゃなくて、横から差し出されている感じがする。だから共感できるのかもしれない。

特に「あをい雨」「かぎりなくさびしけれども」はノートに筆写せずにはいられないほど、私の心を揺さぶった。

岩波文庫高村光太郎詩集には掲載されていない「戦争協力詩」もいくつも収録されていて、あらためてあの時代に生きた文豪たちの辛苦を忍ばずにはいられない。また巻末には詩論のエッセイも併録されており、一冊で高村光太郎という人を概観できる仕様もうれしい。

 

3|宮沢賢治銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜 (角川文庫)

銀河鉄道の夜 (角川文庫)

 

 

今年はさんざん本に泣かされたのだが、この一冊ほど私の心を強く強く打ち抜いた本はなかった。特別カバーの表紙がかわいいからと手に取ったのだが、生きものや自然、そして虐げられたものたちへのまなざしはあまりにやさしく、こころに傷を負い、なおかつ他者を傷つけてきた私にはあまりにまぶしすぎた。

奇しくも秋頃に宮沢賢治作品の朗読会に足を運んだこともあり、また生誕120周年の記念すべき年だったこともあり、今年宮沢賢治の作品に触れられたことは特筆すべきことだったと思う。私に生きる上での指針を与えてくれた、そんな一冊だった。

 

「こわいことはなにもない。おまえたちの罪はこの世界を包む大きな徳の力にくらべれば太陽の光とあざみの棘のさきの小さな露のようなもんだ。なんにもこわいことはない」(……)「みんなひどく傷を受けている。それはおまえたちが自分で自分を傷つけたのだぞ。けれどもそれも何でもない、」――宮沢賢治ひかりの素足」p120

 

 

この言葉は何度だって引用したい名文だ。

生きる困難さを背負いながら、それでも心折れることなくひたむきに歩む登場人物たちにどれほど勇気づけられたことだろう。

 

4|山尾悠子『夢の遠近法』

増補 夢の遠近法: 初期作品選 (ちくま文庫)

増補 夢の遠近法: 初期作品選 (ちくま文庫)

 

 

どれほどこの作品に励まされたかわからない。「ああ、私もこんなに自由に〈自分の好き〉を詰め込んだ小説を読んでいいんだ……!」と背中を押してくれた一冊。「パラス・アテナ」も「ムーンゲイト」も、そして「童話・支那風小夜曲集」も年初に読んだきりだというのに、未だにその鮮やかな色彩が色あせることはない。今月には歌集『角砂糖の日』が刊行されたということで、個人的にも公にも山尾悠子イヤーとなったなあと思う。

これからも私が小説を書いていく上で、間違いなく道しるべとなる一冊だと思う。

 

5|円城塔『道化師の蝶』

道化師の蝶

道化師の蝶

 

表題作のフェズで老女とともに刺繍をする場面は、未だに心の中に残っている。併録されている「松ノ枝の記」とともに言葉の世界を旅する物語で、高等遊民の与太話のような語り口で物語りが進む。いや、進んでいるのか戻っているのかすらよくわかならい。小説の構造そのものを解体したり再構築したりしていて、「物語を旅する」という体験を味わえる作品。この一冊を読んで円城塔という作家に魅了された。

 

6|朝吹真理子『きことわ』

きことわ

きことわ

 

 

岩波文庫の無料冊子「古典のすすめ 第2集」に収録されたエッセイを読んでからというものの、彼女の小説を読みたいと思っていて手に取った一冊。現代映画の映像のようにまばゆくぼやけた雰囲気の中、夢のようなふたりの女性の交流を描く。具体的な出来事はほとんど思い出せないのに、映像として心の中にいつまでも残っている作品。読んだ当時はだいぶくたびれていて、筋のはっきりしない小説を読みたいと思っていたから、私の心にぴったりな一作となった。

 

7|『フランス短編傑作選』

フランス短篇傑作選 (岩波文庫)

フランス短篇傑作選 (岩波文庫)

 

この本でリラダンに出会えたことは本当に大きな収穫だった。全体的に怪奇幻想テイストの小説が多いので、そちらがお好きな向きにはぜひおすすめしたい。個人的にはロマン・ガリーの『ペルーの鳥』が白眉。彼の小説をもっと読んでみたいのだけれど、あまり翻訳が進んでいない模様。海外文学あるあるなのかな。プルースト「ある少女の告白」やラルボー「ローズ・ルルダン」は少女小説の色合いが濃厚で、プルーストというと『失われた時を求めて』が真っ先に浮かぶ人ほど読んでみてほしい。

 

8|白洲正子『かくれ里』

かくれ里 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

かくれ里 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

 

こんなに順位が下がってしまったけれど、この本は間違いなく日本人の良心だと思う。手垢の付いたステレオタイプな観光地を一蹴し、「かくれ里」に残された日本の本来の姿を探ろうとする著者の姿勢には頭が下がる。寺社に守り継がれてきた能面に美を見いだす心は白洲正子ならではの美意識なのだろう。彼女の遺した無形の財産の大きさに驚くとともに、また近江に足を運んでみたくなった。なお、信州旅行へ行く際に、彼を置いて一足先に新幹線に飛び乗り、不安に駆られながらこの本を読みふけっていたのは忘れがたい思い出になった。

 

9|金井美恵子『兎』

兎 (1973年)

兎 (1973年)

 

 金井美恵子に出会ったのも今年だった。図書館の閉架書庫から引っ張り出してもらい、けだるい夏の午後のひとときに、布団に背をあずけながら読みふけった記憶がある。私の詩に影響を与えた本のひとつであり、これからも影響を与え続けるだろうと思う。まだ二冊ほど彼女の本を積んでいるので、来年は丹念に読み込みたい。本書で「甘い痺れるような全身の疲労感」という言葉に出会ってから、常につきまとう疲労感も愛せるようになった。そういう意味では大いに助けられた本でもある。

 

10|皆川博子『ゆめこ縮緬

ゆめこ縮緬

ゆめこ縮緬

 

  もはや順位などどうでもいい。皆川博子と再会して「悔しい、でも好き、やっぱり大好き」という気持ちを思い知らされた一冊。今年は皆川博子の本を三冊読んで三冊積んだが、山崎俊夫に影響を受けたとおぼしきこの本が一番好きだ。なんといっても「文月の使者」が収録されている時点で好きになるに決まっている。表紙に吉田良氏の球体関節人形があしらわれているのもポイント高い。これからもっと彼女の作品を読んでいきたい。今後ともどもお世話になること間違いなしの作家だ。

 

 

この順位にもの申したい人も多いかとは思うが、私の記憶フィルターによって選んだので、好きとか嫌いの度合いというよりは、より印象に残っている本が上位に来ている。本に救われるという体験を何度も味わえた、本当にいい年になった。

 

ただ学術書をほとんど読めなかったことが残念でならない。大学を卒業して二年目だった今年は、つい娯楽にばかりながされてしまったなと反省している。来年はもう少し意識的に読んでいきたい。

活動報告

お知らせ

■紫水宮

久しぶりに詩を載せました。

 

http://star-bellflower06.tumblr.com/post/153861325092/海洋神話学

star-bellflower06.tumblr.com

 

創作仲間の彼からいろいろと忌憚のない意見をもらって、今後の方向性を考えて行かねばなぁと思ったものの、

思ったより反応をいただけていてうれしかったです。

 

最近ずっと詩についてぐるぐる考えていますが、まだ答えは出ていません。

しばらく試行錯誤することになりそうです。

 

 

■かもめソング

先週が担当週だったので、詩を載せました。

 

http://kamomesong.tumblr.com/post/153983730898/秋薔薇の紅茶

kamomesong.tumblr.com

同人仲間からあたたかい感想をもらえて、励みになりました。

ここのところオリエンタルな雰囲気の詩が続いていたので、西洋的な詩を書きたくなったんです。

もう少し表現の幅を広げていけるといいなと思っています。

 

 

■写真

https://www.instagram.com/p/BNqqLKiAaDp/

Gold fishes.#すみだ水族館 #金魚 #ukiyoe #浮世絵 #goldfish #cool #art #japaneseart

 

もともと写真を撮るのは好きなんですが、ここのところ絶不調で屍のように暮らしていたので、なんとはなしに写真をあれこれいじっていました。

私は絵が描けない人間なので、ビジュアル的な表現はもっぱら写真に限られてしまうんですが、わりと納得のいく仕上がりになったこともあって、少し元気が出ました。

表現手段の一部として、もっと積極的に写真を撮っていきたいです。

 

芸術鑑賞記録

ブログ

■デザフェス vol.44

彼と行ってきました。デザフェスは芸大の学園祭みたいなノリを楽しめるので、毎回幾たびに新たな発見があって楽しいです。

今回は無謀にも事前にサークルチェックをすることなく、足を運んだのですが、以前ペンダントを購入したアトリエKさんのブースにたまたま立ち寄って、ブレスレットを購入しました。

まさかまたこういう形で出会えるなんて……と感激してしまいました。

 

それから4階の照明を落としたゾーンではNagnomaさんのポストカードを購入。

ここのところ友人が元気をなくしていた様子だったので、お手紙を出そうと明るめのものを選びました。右ふたつは自分用に。

手紙魔なのにポストカードを送る習慣がなかったのですが、今回友人知人に送ってみて、ポストカードっていいなぁと感じました。

送り先の人の好みを考えたり、その人の気持ちに寄り添うようにチョイスができるのがうれしいです。

手紙魔活動もお休み気味だったので、またちょっとずつ再開していきたいところ。

 

■アザリロヴィック監督「エヴォリューション」@UPLINK

 

 

大学時代の先輩とUPLINKでエヴォリューションを鑑賞してきました。

併映されていた「ネクター」ともども、私の好きな世界観がぎゅっと濃縮されていて、鑑賞から一週間ほどになろうかというのに、まだ映画の世界にひたっています。

ネクター」はメイドたちに体をなで回されて、女王蜂がベッドで悩ましげな吐息をこぼしているシーンが好きで好きで……。ああいう耽美なエロスは私の理想美そのものです。

映像で魅せる映画はもともと好きで、前作「エコール」も何度も観ていますが、今回は

より観念的な美を描いていることもあって、さらに映像美に没頭してしまいました。

「エヴォリューション」の方は、終始不安がつきまとうほの暗い画面と、看護師たちの不気味な面立ち、そして少年たちの人体実験じみた妊娠という倒錯した美が、観る者の心に押し迫ってきて、これまでにない映画体験を味わえました。

 

いつわりの母親たちの交合のシーンも惹かれましたが、あのゲテモノごはんがなかなか脳裏から去ってくれません。

海辺育ちで、海の貝(地元ではミナと呼んでいました)を塩で炊いて食べるとか、祖父の拾ってきたウニをたたき割って生ウニをすするとかいう幼少期を過ごした身としては、あのゲテモノごはんはきっと美味しいのではないかと思ってしまいまして……。

 

まあそれはともかく、劇場で購入したパンフレットも内容が充実していて、皆川博子津原泰水七戸優二階健などアングラサブカル御用達の方々のコメントが収められているのがうれしいかぎり。ヒグチユウコさんのイラストも入ってます。

なにより、アザリロヴィック監督が影響を受けた作品がリストになっているのがありがたいです。

本ではレイ・ブラッドベリシオドア・スタージョンフィリップ・K・ディックラヴクラフトなどSF作家や怪奇幻想系の作家が挙げられていて、これは読まねば……!と心を駆り立てられます。

SFは去年個人的ブームが来たものの、最近はご無沙汰だったのでもっと読みたいところ。

 

 

河瀬直美監督「あん」

「エヴォリューション」に誘ってくださった先輩からお借りして、ようやく観ました。

私の祖母はあんからお饅頭を作ったり、お餅を作ったりしていたので、樹木希林さん演じる徳江さんが祖母の姿に重なってしまって、あんを作るシーンからずっと涙が止まりませんでした。

身近にある自然のささやかな美しさに目を留めて、大切に慈しむ姿も祖母と重なって、こういう生き方をしてきた人間のうつくしさにはかなわないな、と心から思いました。

 

それから千太郎さんの無愛想な態度とか、わかなちゃんのぼそぼそとした話し方とか、実にリアルでいとおしくなりました。

社会でうまく生きていけない人間たちが寄り添って、心を通わせ合う姿は、切なくなるほどに胸に響きます。

私もまた社会的にうまく生きていけずにいる人間のひとりなもので……。

それでも生きていこうというメッセージが伝わってくる、本当にすばらしい映画でした。

 

 

すみだ水族館

蜷川実花さんとのコラボでクラゲが展示されていて、幻想的なうつくしさに魅せられました。

水族館へ行くたびに水槽を眺めて「ああこの子たちも生きてるんだなぁ」と不思議な気持ちになります。

どんなに小さな魚でも、小指の先ほどの大きさのクラゲにも、ひとしく命が宿っていることに毎回驚かずにはいられません。

奇妙な貝やイソギンチャクを観て、一緒にいた彼が「こいつらどんな気持ちで生きているんだろうな」と云ったのが印象的でした。

それから、すみだ水族館にはガラス張りのクラゲの研究ブースみたいなスペースが設けられていて、そこで白衣を着た女性がクラゲの水槽の世話をしていたのですが、彼と「短編小説の主人公みたいだな」「小川洋子の小説に出てきそうだよね」と話したのでした。

実はここでもポストカードを買ったので、また時期を見て誰かに送りたいと思っています。

なぜ文アルは面白いのか

文アル

文豪とアルケミストを初日からはじめて、ちょうど二十日になる。やりこめばやりこむほど文アルのおもしろさにのめり込みつつあるので、なにがそんなに面白いのかを書いてみたい。

 

いくつか原因はあるのだが、その最たるものとして会派のメンバーのちぐはぐさがある。

ちぐはぐなメンバーの何がおもしろいのか、と思われるかもしれない。史実の会派や好みの作家で会派を作っている人も多いだろう。

 

だが私の元には谷崎潤一郎が未だに来ない。谷崎潤一郎に一目惚れして文アルをはじめたにもかかわらず、未だに来る気配がない。

よって好きなメンバーで会派を固めることができないという縛りが生まれている。

私だって谷崎潤一郎永井荷風高村光太郎泉鏡花と好きな面々をフルメンバーでそろえたい。その欲求はたしかにある。だが谷崎潤一郎泉鏡花も未だ手元にない。

どだい好きなメンバーだけ育てるということが難しくなる。

それでも元々レベリングがおっくうな人間なので、会派すべてにひとりずつ好きなメンバーを入れないと、育てたくなくなるのは目に見えていた。

さらに武器種が偏らないように育てなくては、ボスマスまでなかなかたどり着けないというゲーム面での縛りもある。

ただでさえ弓や銃は重宝する武器種だ。ひとりでも多く育てておけば、ダメージを受けて補修が必要な時にでも対応できる。

そこで今の編成になった。

※会派四はレベリング底上げ部隊なので、キャラが入れ替わり立ち替わりしていて固定メンバーはいない。

 

会派一

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会派二

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会派三

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谷崎潤一郎に惚れるつもりが、いつの間にか高村光太郎を偏愛するようになったという記事は以前書いたとおりだが、このように会派を組むとキャラの性格も属性もばらばらになる。

 

会派一でいうと、徳田秋声はツンツンとした性格で、中野重治は物腰が柔らかだ。高村光太郎は性格的に光属性だが、島崎藤村は闇属性と云える。

同じくネガティブな性格であっても、島崎藤村の戦闘ボイスは軽やかで、徳田秋声には不快感がにじむ。穏やかなようで射ても中野重治は懊悩を抱え、高村光太郎だけがただひとり精神の安定を保っている。

それぞれの性格のアンバランスさを高村光太郎が支えていると思うと、とたんにわくわくしてくる。

こうして意図せず対照的なメンバーが揃うと、戦闘にもハリが出てくる。キャラ同士が互いを引き立て合い、戦闘中のボイスの重なりにもおもしろさが生まれる。

 

会派二では織田作之助の語気の強い関西弁と、新美南吉のサドショタボイス、国木田独歩の気合いを放つ声に吉川英治の金言めいた台詞が重なる。

新美南吉吉川英治の双筆神髄では、

新美南吉「どんないたずらにしようか?」

吉川英治「一計を案じよう!」

という固定台詞の偶然のつながりが生じ、一見関わりのなさそうなふたりがいたずらを考えているようなおもしろさが出てくる。

元々吉川英治の武士のような雰囲気が好きでこの会派を組んだのだが、国木田独歩の気品のある誇り高さはほほえましく、織田作之助の「あーしんど、カレー食べにいけへん?」という帰還台詞に戦闘の疲れを癒やされる心地がして、この会派のメンバーが全員かけがえのない存在になってしまった。

 

会派三では偶然にも酒好きな若山牧水石川啄木が揃ったが、若山牧水のくたびれた飲んべえ親父のような語調に石川啄木の荒っぽい声が効いてくる。

さらに森鴎外の落ち着きを払った声がふたりを制し、小林多喜二の静かな声がそれに続く。

石川啄木小林多喜二は回想があることもあって、ふたりが揃うとでこぼこコンビの高校生のような雰囲気がある。大人っぽい森鴎外若山牧水と対照的な雰囲気を生むのがおもしろい。

当初は森鴎外が好きだったのだが、石川啄木の翳りを帯びたヤンキー加減が大変ツボにはまってしまった。実のところ高村光太郎との回想が気に入ったので、高村光太郎と同じ会派に入れたいのだが、しばらくはこの会派に留めておきたい。

 

こうして意図せずさまざまな個性をもったキャラ同士がぶつかり合い、同じ釜の飯を食い、それぞれの武器を手に戦う。

そうこうしているうちに気づけば誰もがいとおしくなってくる。

好きなキャラや似通った属性だけを偏愛していたとうらぶでは得られなかった楽しさを、文アルで味わえるのだ。

 

 

文アルをやっていて、キャラの個性のぶつかり合いというのは、一次創作ではとても大事なキーなのだということに気づいた。

二次創作ではキャラの親和性を求めるあまり、似た傾向のキャラをCPにしてしまいがちなのだが、そうするとキャラ同士に奥行きは出ても、広がりは出ない。

互いが互いのことをなにもかも認め合い、気質が似通っていて、あうんの呼吸で深く理解しあっている関係ではドラマは生まれ得ないのだ。

それぞれのキャラが互いを引き立て合う関係は物語に広がりを生むだけでなく、奥行きすらも兼ね備えることができる。

 

文芸ラジオ 2号 ([テキスト])

文芸ラジオ 2号 ([テキスト])

 

前作「雪花物語」(『文芸ラジオ』2号所収)を書いたとき、主人公ふたりとは対照的な、峰というキャラクターを加えた。

主人公の晶とは対照的に朗らかでお人好しな中年で、長崎弁で主人公を物語の中へ引き込んでいくという役回りで、私の好みからすればだいぶ外れてしまうのだが、さまざまな人から感想をもらったときに「峰さんが素敵だった」という声をいくつかいただいた。

彼がいなければ物語は動かなかっただろうし、作品の雰囲気だって無駄に重々しくなっていただろう。

作品の魅力とはキャラクターの多様性にこそあるのだとつくづく感じた。