広寒宮

アマチュア作家・雨伽詩音の活動報告その他諸々

【活動報告】SSと俳句

◇SS
蓮花の寺

 

http://star-bellflower06.tumblr.com/post/174271515177/蓮花の寺

star-bellflower06.tumblr.com

 

 

先日彼とチャイニーズ・ゴースト・ストーリーという映画を観て、その世界観に大いに魅了されて書いたのでした。

 

チャイニーズ・ゴースト・ストーリー〈日本語吹替収録版〉 [DVD]

チャイニーズ・ゴースト・ストーリー〈日本語吹替収録版〉 [DVD]

 

 ジョイ・ウォン演じるシウシンという美女の幽霊が本当に美しくて美しくて。

水上亭で古琴を奏でる姿だけで白米3杯ぐらいいけちゃいそうなぐらい惚れてしまいました。

原作は聊斎志異とのことで、こちらもぜひ読んでみたいです。

 

聊斎志異〈上〉 (岩波文庫)

聊斎志異〈上〉 (岩波文庫)

 

 

 

聊斎志異〈下〉 (岩波文庫)

聊斎志異〈下〉 (岩波文庫)

 

 

 

ちなみにこの「蓮花の寺」は先日ブログでもお知らせした、第四十三回Twitter300字SSで書こうと思って書いていたのですが、字数を大幅に超えてしまったため、別途TumblrにUPしたのでした。

evie-11.hatenablog.com

 

ちなみにカクヨムにも歴代のTwitter300字SSを収めています。ぜひご覧ください。

kakuyomu.jp

 

 

◇俳句

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原稿合宿なるものにずっと憧れがあったのですが、この日は彼とあじさい園に行った後、駅前のカフェで各々創作に励み、楽しい時間を過ごしました。

彼は詩を書き、私は俳句を詠みながらカフェで過ごすひとときは大変楽しかったです。

 

 

http://star-bellflower06.tumblr.com/post/174908832222/水無月の子守唄

star-bellflower06.tumblr.com

 

紫陽花という題で俳句を詠むようにと頼まれて詠んだのがこちらの紫陽花の句で、色々と詠んでみたものの、「雨伽の俳句だと紫陽花ってパンチが弱いから、たぶん曼珠沙華とか薔薇とかの方が向いてるんじゃないか」と彼に評してもらいました。ほんそれな。

 

五月雨の句は昨日寝転びながら詠んだ俳句たちです。低血圧と梅雨の相性が大変よろしくないため、体調を崩しがちな今日この頃なのですが、そういう時ほど俳句を詠むのが捗りますね。

まだまだ勉強不足で、もっともっと改良の余地があるなと思うので、今後とも精進したいです。

 

異性を描くということ

私は小説の中で異性を描くのが本当に下手で、『文芸ラジオ』1号に寄稿した「翡翠譚」に出てくる仙人・白翠も、読者の方から「女性だと思っていた」と評され、今回『かもめソング』に寄稿した「翠の鳥」の主人公・清雪も、校正会の段階で、メンバー全員から「女性だと勘違いしていた」という評価を下された。もともと清雪の名は「玉雪」と書いていたこともあったのだろうが、私は日本文学でも中国文学でも、男性的な名前というものがどうにも好きになれず、例えば私がこよなく愛するチャン・イーモウの映画「HERO 英雄」でも飛雪(フェイシェ)という名前の女刺客にどれほど焦がれたかわからない。もっともそれはマギー・チャンが演じていたというのも大きな理由の一つだったのだろうけれども。

今書いている小説の登場人物の名前も「白蓮」と書いていたが、「これは女の名ではあるまいか?」と思い、「墨蓮」に改めた。ボクレンとはなんとも味気ない響きだ。
恥ずかしながら未読なのだが、源氏物語に出てくる男性は「薫」「夕霧」となんとも美しい。私としてはそういう風情に惹かれる心のままに男の名前をつけるのだけれど、読者に誤解を与えては元も子もない。

ならばもういっそ性別を越境した存在を描いてしまえばいいのではないかと思い、『かもめソング』の校正会を経て生まれたのが「翠の鳥」に登場する帝で(名前はまだない)、彼もしくは彼女の物語をいずれ書きたいと思っている。

性別を越境する面白さを私に伝えてくれた原点は、おそらく少女漫画の『フルーツバスケット』に登場する草摩慊人や、『ベルサイユのばら』のオスカル、萩尾望都の『11人いる!』のフロルベリチェリ・フロル、そして茅田砂胡ライトノベルデルフィニア戦記』のシェラなど、数多く存在している。

 

 

11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)

 

 

ベルサイユのばら(1)

ベルサイユのばら(1)

 

  

放浪の戦士 デルフィニア戦記1 (C★NOVELSファンタジア)

放浪の戦士 デルフィニア戦記1 (C★NOVELSファンタジア)

 

 


自分自身、性別というものを曖昧なものとして捉えてきたという実体験もあり、自分自身が女性であるという認識をおとなしく受け入れるに至ったのは二十歳を過ぎてからのことだった。
この性の狭間にいる葛藤は長らく私を苦しめ続けてきたが、長らく付き合っている今の恋人からも「雨伽は男子高校生みたいなところがあるからね」と云われて、ああそれでいいんだなと腑に落ちてからだいぶ楽になった気がする。
まあそれはさておき、私はきっとこれからも女性のような男性を描き続けるのだろう。観音像を理想美の一つと捉えるように。

【活動報告】かもめソング完売御礼とSS

先月の文フリ東京で頒布した『かもめソング』が完売しました。
イベントではなかなか手にとっていただけなくて、30部は刷りすぎたかなぁと危惧していたのですが、折しもBOOTH Festivalと時期が重なったこともあって、BOOTHでの売り上げが伸びたようです。
あとはだいたい関係者で捌けてしまったので、今後はもう少し知名度を上げられるといいなと思います。
ちなみに再販の予定は今のところありません。
私の個人詩集『挽歌-elegy-』はまだ通販受付中です。

star-bellflower.booth.pm


A5・20頁・400円になります。
こちらはイベントの方が捌けたなという印象なので、やはり手に取っていただくためにも、装丁にこだわるのは大事なのだなぁと感じました。
遊び紙のトレーシングペーパーが気に入ったので、今後本を作るときもまた使ってみたいです。
サークルとして初参加ということもあって、色々と勉強になりました。

 

 

◇Twitter300字SS
「月蝕譚」


空というお題で参加させていただきました。
私にしては珍しく現代っぽい仕様になっております。
蔵書票って憧れの存在なんですよね。鎌倉に行ったときにギャラリー青騎士という画廊に立ち寄ったのですが、そこでアルフォンス・イノウエの作品を初めて生で見て感無量でした。
ちなみにこの作品の蔵書票は伊豫田晃一さんの作品のイメージです。

http://star-bellflower06.tumblr.com/post/174496321183/月蝕譚

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◇かもめソング

「ユダの赤いろうそく」
担当週ということで、珍しく掌編を書きました。
こちらも現代モノですが、西洋の方に寄せようと思わずカトリック寄りになりますね。
ちょうど今北原白秋邪宗門を読んでいるところで、まだまだ修行が足りないなぁと感じました。

http://kamomesong.tumblr.com/post/174495402045/ユダの赤いろうそく

kamomesong.tumblr.com


ちなみにこのふたりの最後は読者の方々の想像にお任せしますが、この神父さまは少年の傀儡となって生きてゆくのだろうなと思います。
いっこさんから感想をいただいて、ラストの一文が結構気に入っているので、評価していただいてうれしかったです。
奇しくもどちらの作品も笑う/笑わないという〆で終わっていますが、私自身はあまり喜劇というのが好きではないので、笑うという行為はある意味ホラーでグロテスクだなぁと感じています。
ちょっとホラーチックな雰囲気を醸し出したくて、こういうオチになりました。

【お知らせ】シズムアンソロウェブと短歌

先日お知らせした通り、うさうららさん主催のシズムアンソロウェブに参加させていただきました。
詳細についてはこちら。

evie-11.hatenablog.com

 

寄稿した作品はこちらになります。

kakuyomu.jp

 

感想もいくつかいただきまして、まことに感謝申し上げます。


詩集『挽歌-elegy-』も『かもめソング』に寄稿した「翠の鳥」もそうだったんですが、読者の方が読んでくださってこその作品だなということをしみじみと感じました。
私の文章は自分自身ではあまり女性的だなとは感じないのですが、近ごろ女性的と評価していただけることが多くて、密かにうれしいです。
やわらかくて透明感のある文章は私には逆立ちしても書けないんだろうなと思っていたので。
多くの方に読んでいただけて幸いです。


そしてこちらもうさうららさん主催の短歌ハッシュに寄稿した短歌をまとめてみました。

http://star-bellflower06.tumblr.com/post/174018525507/春宵

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いずれちゃんとまとめたいなとは思っていたのですが、素人の手遊びといったところなので、気後れしてしまっていたのでした。
いえ、自分の詠む歌は自分なりには気に入っているのですが、短歌専門でものを書いているわけではないので、自分が楽しめる範囲でこれからも詠んでいければいいかなと思います。


それから今後の予定としては、6/2のかもめソング担当週には掌編を載せるつもりです。
私にしては珍しく、現代、そして西洋の雰囲気のある作品に仕上がっています。
どうぞお楽しみに。

 

ちなみに『かもめソング』と詩集『挽歌-elegy-』はBOOTHにて通販受付中です。

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『かもめソング』に関してはあと残り3冊となりました。

再販のめどは立っていませんし、次回イベントに参加する予定も未定です。

ぜひこの機会にお迎えください。

私が寄稿した「翠の鳥」にいただいたご感想はこちらです。

 

evie-11.hatenablog.com

ご参考までにどうぞ。

 

【お知らせ】活動報告と今後の予定

先日の文フリはお疲れさまでした。
ちょうどBOOTH Festivalの時期とかぶっていたこともあり、BOOTHで思ったよりも多くの方々に本を手に取っていただけて嬉しかったのです。

引き続き合同誌『かもめソング』と詩集『挽歌-elegy-』をBOOTHにて頒布しております。

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詩集『挽歌-elegy-』も合同誌『かもめソング』も再販のめどは立っていません。
特に『かもめソング』は残すところ5部となっておりますので、ご入用の方はお早めにどうぞ。

※かもめソングは500円に値下げしております。


フォロワーさんより詩集のご感想をいただきましたので、こちらに貼らせていただきます。

お買い求めの参考になれば幸いです。

 

 

さて、今後の予定ですが、

◇短歌ハッシュ
うさうららさん主催の短歌ハッシュ5月号に寄稿させていただいております。


獣と肉がお題ということで、アリプロの「人生美味礼讃」ばりにカニバリズムを詠んでもよかったのですが、せっかく薔薇の季節なので、それにふさわしい歌を詠みました。

 

◇シズムアンソロウェブ企画

またうさうららさんには#シズムアンソロウェブでもお世話になる予定です。

usaurara.hatenablog.com


私が書くのは「花ざかりの地獄」という呪われた一族のお話で、ホラーというよりは耽美に振り切っている感じです。
5/18 21:00~カクヨムにて公開予定です。
翡翠譚」を『文芸ラジオ』1号に寄稿して以来、初めwebでお読みいただける嘉村の短編小説となります。
それだけに気合を入れて書きました。
「花ざかりの地獄」というタイトルは、アントニオ・タブッキの短編集『逆さまゲーム』に出てくる、


“しかもそれが母さんが「ほんとうは、ひとりでじぶんの悲しみと向きあっていたかった」あの地獄みたいだった日のことで、母さんはいろいろなことをいちどきに考えなければならなかった”


という一節からインスピレーションを受けました。

 

逆さまゲーム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

逆さまゲーム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

 

 本当にあるんですよね、こういう日が。しかしそれが一日限りでなく、永続的に続いていたら……というのが今回発表する「花ざかりの地獄」です。
イメージBGMは OrbitalのHalcyonです。あの酩酊感を表現できていればいいなと思います。


Orbital - Halcyon On and On [HQ]

 

なおこちらの作品は、カクヨムに公開するにあたって、以下の自主企画に参加する予定です。

夢やマボロシ、嘘や幽霊など幻想的なモノを扱う作品募集!名付けて「マボロシ杯」

・趣味全開作品を執筆されている方

・独特の世界観のある作品、読ませてください

カクヨムのいいところは、メジャーな異世界ファンタジーだけでなく、私のようなマイナーな作風でも発表しやすいところですね。

今後も積極的に自主企画に参加させていただきたいと思っています。


そのあとは6/2にwebかもめソングの担当週が巡ってきます。
実のところまだ何を書こうか決めていないのですが、現代小説にもうちょっと挑戦してみたい気もするので、千字ほどの掌編を書くことになるかもしれません。
最近体調が安定しないこともあって、もしかしたらこれまで短歌ハッシュに寄稿させていただいた短歌のまとめになるかもしれませんし、詩集『挽歌-elegy-』を作るに当たって書き下ろして没になった作品の中から、出来のいいものを選んで載せるかもしれません。
体調と相談しつつ決めたいと思います。

 

その後の予定は完全に白紙です。
いずれ個人サークル紫水宮として掌編集や句集を出してみたいという思いはあるのですが、今回文フリに参加して、本を作るのにどれだけ手間がかかり、また宣伝などそれ以外の部分でもどれだけ体力気力を消耗するかがわかったので、年内のイベント参加はまずないかと思います。

 

アンソロ等のお誘いがあればいつでも募集しております。

当方、耽美な作風が売りのサークルなので、そういうテーマのアンソロジーにぜひ参加させていただきたいです。

それからマシュマロをはじめました。感想や小説のおすすめ、本当は教えたくない古書店の名前などのご質問、ご自身のぶつけたいフェティシズムなどなんでもお気軽にお寄せください。

marshmallow-qa.com

【お知らせ】BOOTH 注文受付開始とカクヨム本格始動

文フリ東京で頒布した同人誌2冊をBOOTHで販売することにいたしました。

クリックポストでの配送となります。

ご入金を確認次第、順次発送させていただきます。

star-bellflower.booth.pm

 なお、こちらの2冊はBOOTH festivalにSF・ファンタジー部門で参加中です。

booth.pm

かもめソングに収録されている小説はSF・現代ファンタジー・和風/東洋風ファンタジーと、わりとテーマに沿っている作品が多く、詩集の方は東洋風幻想散文詩になっているので。

 

商品の詳細につきましては、過去の記事をご覧ください。

evie-11.hatenablog.com

 ※合同誌『かもめソング』は500円に値下げしました。

 

併せて『かもめソング』に寄稿した「翠の鳥」にありがたいご感想をいただきましたので紹介いたします。

evie-11.hatenablog.com

 またTwitterでいただいた『かもめソング』へのご感想をモーメントにまとめております。

 ご購入の際のご参考になれば幸いです。

 

 

あとはいつもの活動報告をば。

◇ Twitter300字SS

こちらの作品は松井冬子の作品と、山崎俊夫の小説に多分に影響を受けて書きました。

山崎俊夫の「夜の鳥」に描かれる零落した美少年というモチーフは私にとってかなり衝撃的だったので、なんらかの形で表現してみたいと前々から思っていたのです。

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ちなみにTwitter300字SSはこのたびカクヨムに収録していくことにしました。

kakuyomu.jp

個人的にはTumblrが気に入っているのですが、作品のジャンルごとにまとめておけるという点と、自主企画に参加できるという点はかなり魅力的です。

自主企画“夢やマボロシ、嘘や幽霊など幻想的なモノを扱う作品募集!名付けて「マボロシ杯”に参加させていただいております。

 

さらに、掌編もカクヨムにまとめていくことにしました。

kakuyomu.jp

今のところ Tumblrに投稿した「舞人」と、うさうららさん主宰の手製本アンソロジー『べんぜんかん』に寄稿した「霊亀譚」を載せています。

こちらは自主企画“幻想文学or陶酔感のある小説がぶわぁぁと集まってくる会”に参加させていただいております。

 

過去作の宣伝が多めになってしまいましたが、最後に新作を。

https://www.instagram.com/p/BiKWJtznLHM/

#ゴールデンウィーク ということで、ショッピングのついでに、彼の要望で #ゲーセン へ。最近一緒に#ポケモンサンムーン を プレイしていることもあって、 #クレーンゲーム の #景品 の #アローラロコン があまりにもかわいくておねだりしたら、何度もチャレンジした末に無事に #ゲット してくれました。帰ってきて部屋に飾り、何だか物足りなかったので、母にもらったものの持て余していた #ローラアシュレイ の #スカーフ を巻いてあげたらかわいくてかわいくて。今日はいい夢見れそうです。#pokemon #ポケモン #game #ぬいぐるみ #ゆめかわいい

今更ながら、最近ポケモンムーンにハマっていて、たまたま立ち寄ったゲーセンで、彼がアローラロコンちゃんをゲットしてくれたので、母から譲り受けたローラアシュレイのスカーフを巻いてあげたらかわいくて、ついつい詩にしてみました。

ロコンちゃんの愛らしい風貌とは打って変わった妖狐のお話です。

http://star-bellflower06.tumblr.com/post/173416683977/白狐譚

star-bellflower06.tumblr.com

 

そしてただいまうさうららさん主宰のwebシズムアンソロジーに寄稿する短編小説を書いているところです。

5/18 21:00~カクヨムにて公開する予定でおります。

どうぞよろしくお願いいたします。

拙作「翠の鳥」にご感想をいただきました。

5/6文フリ東京にて頒布した合同誌『かもめソング』に寄稿した、拙作「翠の鳥」にご感想をいただきました。

以下引用です。

 

 

 

現代の夢幻譚〜王になれなかった王子の物語〜

 

「母さまはいずこにおいでなのでしょう。かの小さき一柱の神が渡った常世の国で、打ち寄せる波の音を聴いておられるのでしょうか。」
この印象的な書き出しから、物語は幕を開ける。それによって読者は、この作品世界と我々の日常とが不連続なものであることを直観させられ、幽玄な香りに満たされた異界へと足を踏み入れる。
もう一つこの冒頭には周到な仕掛けが施されている。作者が記紀文学に造詣がありそうだという漠然とした感触に過ぎない理解がここでは我々に残される。しかし、その理解が、やがて黄泉の国へと下りたイザナミよろしく、作品世界からもう帰ってこられないかもしれないという甘美な不安へと肥大化し、その「理解」という理性と「不安」という感性とが読みを駆動していき、結末では高らかに響きあう、その種子が撒かれているといえば言いすぎだろうか。

 

舞台は平安時代頃の貴族の家である。
複雑な生い立ちを持つ少年は、母を喪くし失意にある。彼にとって唯一の慰さめであったのは吹けば降雪をもたらすという雪笛。それは母の形見でもあった。
しかし、いま現在の主人公の保護者で、零落した貴人でもある叔母は、主人公に辛くあたり、果ては雪笛を取り上げ、自身の娘に与えてしまった。
ただ唯一、母と叔母の兄である伯父は、主人公にも、また生前の母にも深い慈しみを与えた数少ない理解者であるらしい。
そんな日々の中でなによりも主人公に暗い影を落としているのは、父親が誰だかわからないという恐怖であることも訥々と述べられていくことから、物語がいよいよ動き始める。

 

以上が作品の序にあたる部分である。
ここから実際に物語が動き始め、磨き上げられた水晶のような幻想や王朝絵巻のような華美が描かれていく。
そこで一貫しているのは、物語の筋という横糸と、それに見事なまでに調和した香り高い文体という縦糸である。それらの糸によって、一部の隙もなく、この物語は紡がれ、現代を範にとった作品ではとても用いることの叶わない大胆な比喩や言い回しがなんの違和感もなくぴたりとはまっている。


その高貴な文体が故に、主人公の感情の振れ幅も巧妙に、しかし大胆に織り込まれている。それが一番あらわれるのは、雪笛をせしめた姉上について恨み言を連ねていく箇所だ。
「(自分が笛を吹けば雪が降るが、姉の場合は)されどいくら吹けども雪は降らないご様子で」
「(孔雀に驚いた姉を指して)孔雀が孔雀に驚いたと、おもしろおかしく語りぐさになっていたようで。」
他の部分では、文末はしっかりと言い切っているのに対し、この箇所では「〜ようで」と曖昧に濁している。いたずら小僧が物陰に隠れながら、舌を出しているような、そんないじらしさがこの余白にはある。このような語尾は、普通の言語感覚だと少し際立ってしまいがちなのだが、それを他意なく読ませられる筆者の力量には舌を巻くばかりである。
他にも、
「私の胸のうちに姉上さまへの軽蔑の念がこみ上げてきたのは偽らざることでありました。
それはさておき(後略)」
ここでもひと息に自己の境遇をまくしたてはしたものの、ハッと我にかえり、途端に取り繕おうとする語り手の揺らぎが見事にあらわれている。

幻想文学としての内容は強いて言うべきではない。
しかし、この作品がいかに王朝物語として、体裁を整えているかという側面から聊か内容に
踏み込んでおきたい。

 

第一に、これが平安などの天皇制を踏まえた優れた王朝物語である点。
山口昌男天皇制の文化人類学』によれば、多くの神話、物語には以下のような二項対立がみられるという。(一部のみ記載)
王/王子
聖性/侵犯
主権/補佐
多くの物語では、「王子」的な存在は、「王」的な存在から迫害を加えられ、それに抗うという。多くの場合、王子は敗れ、それを主人公とした物語が編まれた。(哀悼の念もあったのだろう)
たとえば、『古事記』でのアマテラスとスサノオなどが恒例である。
狼藉を働いたスサノオは、王たるアマテラスから高天原を追い出されるなどの迫害を受ける。

 

加えて、上野千鶴子『神と日本人』では、天皇家内の近親婚の是が論じられている。一般的に同じ一族内での婚姻はタブーとされているのだが、天皇家の中では兄と妹での結婚がなされていた。それは、天皇・貴族・農民といった階級で考えたときに、女子は上の階級の男と結婚をするという原則があるのだが(貴族の女の多くが、皇族と結婚し、やがて外戚政治が形成されたことはよく知られたところである。)、天皇家という最上の階級に属する女はそれより上の男がないから階級内で婚姻をするのだという。(天皇より上、すなわち神と結婚するという意味から、斎宮がうまれたとも述べられている。)
つまり、近親婚というタブーを起こすことは特権的行為であり、『伊勢物語』の在原業平斎宮を密通するということは、単なる色好みという些事を超越して、ヒエラルキーへの挑戦というクーデタ的色彩をも帯びることになる。隼別と女鳥王の話は言うまでもない。

 

以上の二点から考えると、この物語にも、王たる伯父から遠ざけられる王子の物語、そして秩序への挑戦(近親相姦)が読み取れる。
例えば、冒頭で主人公が、かつての母との日々を回想する場面。
「物語の中で、あるときは母さまが雅やかな姫君となり、あるときは私が貴公子となりまして、あまりに幼くつたない恋物語に夢中にな」ると書かれている。
これは、母への恋慕であり、裏を返せばエディプスコンプレックスと呼ばれる父への挑戦である。しかし、主人公にとって父は不在である。だからこそ、この物語が大きく動くのは父という存在が大きな位置を締めるのだ。

 

第二に、この物語が王朝物語、民話としていかに体裁を整えているかという点。プロップ『民話の形態学』並びに折口信夫『国文学の発生』から。
これら二つの論文には多くの民話等に共通してみられる要素が羅列されている。
例えば、『民話の形態学』に書かれている諸要素と本作品とを対照させれば、
「家族のひとりが家を不在にする」→母の死
「主人公に対し禁止する」→主人公の軟禁
「敵は探りを入れる」→雪笛の発見
「主人公は魔法の手段を受ける」→雪笛
「主人公が探しているもののある場所に運ばれる」→主人公の移動
など。
『国文学の発生』では、「貴種流離譚」という日本文学に多くみられる要素に絞って論じられる。
例えば、「日本文学の主人公は弱く、成長が少ない」
「主人公が性的な侵犯を犯したことによって、追放される」
これらはまさに本作にもみられるということはおおむね賛同いただけることと思う。(性的な侵犯を直接起こしたのは主人公自身ではなく、彼の親だが、その罪を彼が引き継いでいるとすれば説明がつく。)

 

以上のような、民話、古典にみられると指摘される要素をしっかりと踏まえた点から、本作がいかに「民話」レベルを踏まえた現代作品であるかが分かる。だからこそ、読者は安心して作品世界に身を委ねられるのだ。

以上を踏まえて、末筆ながら管見を申し添えることをご寛恕願えるなら、本作品は『古事記』、『源氏物語』以来の、「王になれなかった王子」の物語といえよう。
そして、『源氏物語』では、最後に多くの庭園と女性を擁する事実上の帝王となったように、本作でも、最後には庭と鳥を手に入れる。そこに幻想的な要素を織り込んだこととみずみずしい雅文で描いたこととが作者の稀有な能力である。

 

惜しむらくは、会話文をより一層世界観へ親和させられたらと願うばかりだが、地の文体は徹底的に洗練されており、完成度は極めて高い。
その編み込まれた文体に反して、クライマックスは息をもつかせぬ躍動感を伴い、ぐいぐいと読ませる。
細かい小道具や言葉の端々に至るまで、名うての造園業のように手が行き届いており、この世界への思慕は深まるばかりだ。
加えて、これだけ作り込まれた世界観ながら、徹底的に削ぎ落としされた大胆さにも敬意を表したい。(私のような貧乏性なら、これだけ優れた世界を構築したら、もっと書き込みたくなるだろう)

この作品を読んで、折口信夫死者の書』を思い返した。
松岡正剛が『死者の書』を評した賛嘆を結びと変えさせて、拙文を閉じたい。

「珠玉の一冊であるというには、この作品がひたすら凝縮されたものだということがなければならない。長大なものではなく、織りこまれた一片の布切れのようでありながら、そこからは尽きぬ物語の真髄が山水絵巻のごとくにいくらも流出してくるということである。」
松岡正剛の千夜千冊 折口信夫死者の書』」(https://1000ya.isis.ne.jp/0143.html